地域の安定に寄与する「在日米軍」と「在韓米軍」 その共通点と相違点とは
相違点:在日米軍はより広い地域の安定に寄与
在韓米軍は、韓国国内に留まる陸軍を主軸とするなど、地上戦を強く念頭に置いていることからも明らかなように、韓国の防衛を担っています。一方、在日米軍は、日本国外にも展開する海軍や海兵隊が中心であることからも明らかなように、日本の防衛を担うだけではなく、北東アジアや東南アジアなど、日本以外の国々や地域の安全保障にも関与しています。 実際、1996年、中国と台湾の間で緊張が高まった時には、日本に拠点を置いていた米空母などが台湾沖に展開し、中国を牽制しました。また、2015年10月27日、南シナ海において中国が埋め立てた人工島に接近したのも、神奈川県横須賀市に拠点を置く米海軍の軍艦でした。こうして見ると、在韓米軍は朝鮮半島の安定に寄与し、在日米軍はアジア・太平洋地域全体の安定に寄与しているといえます。
平和は“タダ”ではない
在日米軍と在韓米軍を比較すると、両軍が太平洋軍という同じ集団に属している一方、陸海空軍などの構成や安定に寄与している地域の範囲に違いがあることが分かります。米軍を受け入れている国民としては、駐留米軍を「基地問題」という言葉に象徴されるような、国内からの視点で捉えがちです。しかし、自国に駐留する米軍のみならず、隣国に駐留する米軍に目を向け、両者を比較することにより、世界規模で展開されている米国の安全保障政策の一端を知ることができます。そして、米国が地域の平和を維持する為に、多大なコストを払っていることに気付かされます。駐留米軍の存在は、平和が決して“タダ”ではないことを教えてくれています。 (廣瀬泰輔/国会議員秘書)
---------- 廣瀬泰輔(ひろせ・たいすけ)。元米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員。防衛大学校卒。松下政経塾卒。日本財団国際フェローシップ(2期)。EU短期招聘訪問プログラム(EUVP、2015年)。主な執筆記事に、「日本の平和を維持してきた『抑止力』 一翼を担う在日米軍の全体像とは?」