地域の安定に寄与する「在日米軍」と「在韓米軍」 その共通点と相違点とは
「世界の警察官」と呼ばれてきた米国は、世界中に軍隊を展開し、同盟国や友好国の安全保障に関与することで、地域の安定に寄与してきました。現在、日本に駐留している約5万人の「在日米軍」や韓国に駐留している約3万人の「在韓米軍」は、その典型的な例です。同じく海外に展開している両米軍ですが、比較をしてみると、共通点のみならず、相違点も見えてきます。在日米軍と在韓米軍は、同じ集団に属している一方で、陸海軍などの構成が異なり、安定に寄与している地域の範囲にも違いがあります。比較を通じて、平和を維持するためにはコストが必要であることにも気付かされます。
共通点:同じく「太平洋軍」に所属
在日米軍と在韓米軍は、共に「太平洋軍」という米軍内の集団に属しています。この集団は本来別々の組織である陸軍、海軍、空軍、海兵隊を一体的に活用するために編成されたもので、「統合軍」と呼ばれています。米国は「統合軍計画」という米国防省の計画に基づき、世界を6つの区域に分け、それぞれに統合軍を配置することで、米国の安全と国益を守ろうとしています(図表1参照)。 太平洋軍は6つの区域の中でも、米国西海岸沖からインド洋に至る、最も広い区域を担当しています。在日米軍と在韓米軍を束ねる太平洋軍の司令部は、ハワイ州のホノルルにあります。ちなみに、現在、太平洋軍を率いているのは神奈川県横須賀市出身の日系米国人、ハリー・ハリス提督です。
相違点:在日米軍の中心は海軍、在韓米軍の中心は陸軍
在日米軍の約半数が海外展開を前提とする軍艦の乗員や海兵隊の隊員で占められているのに対し、在韓米軍の約7割は韓国国内に留まることを前提とする陸軍の隊員です。米国防省の統計によれば、2015年3月現在、在韓米軍の総数は29,041人であり、在日米軍の6割程度の人数です(図表2参照)。 在韓米軍の中でも最も人数が多い米陸軍は約20,000人おり、戦車やロケット砲など、強力な装備を保有しています。この点は、補給などの後方支援を担う部隊が2,000名程度しか駐留していない在日米軍とは大きく異なります。 在韓米軍で2番目に人数が多いのは米空軍で、約8,000人駐留しています。在韓米空軍の保有機のうち約4割は、相手の航空機ではなく、戦車や兵員など、地上の目標に対応する「攻撃機」です。これは、保有機の約9割が、主に相手の航空機に対応する「戦闘機」である在日米軍とは異なります。 在日米軍とは対照的に、韓国には米海軍と米海兵隊がほとんど駐留していません。米海軍は、朝鮮半島の南端に位置する、唯一の米海軍基地である「鎮海(チネ)基地」などに約300人が駐留しています。米海兵隊は、韓国の首都であるソウル市内などに約150人が駐留するのみです。