日大アメフト部は“一旦”廃部、一方で進まないガバナンス改革…取材記者が感じた日大への違和感とは
アメフト部の薬物事件をめぐり、深刻なガバナンス不全と上層部のずさんな対応が浮き彫りになった日本大学。2023年12月にはアメフト部の廃部を決定したが、こうした問題は未然に防ぐことはできなかったのだろうか。取材記者が感じた日大への不信と違和感とは。 (社会部 島津里彩) 【動画】文科省に改善計画を再提出 日大・林理事長が記者団にコメント
■「廃部」に追い込まれた“不死鳥”
「フェニックス」の愛称で親しまれ、1940年の創部以来、大学日本一を決める「甲子園ボウル」で21回優勝するなど、国内屈指の強豪校として活躍してきた日本大学アメリカンフットボール部。 違法薬物事件をめぐり、これまでに現役部員が3人逮捕、1人が書類送検されたことなどを受け、大学の理事会は12月にアメフト部の「廃部」を決定。83年の歴史に完全に幕を下ろすように見えたが、大学側は「学生に不利益を生じさせないため」として、来年度に向けて、すぐ新しく部をつくり直す方針を打ち出した。
■“一旦”の廃部に結局なんの意味があるのか
この形だけの“一旦”の廃部で何が変わるのか──。大学は今後、新しい部の創設に向けて、入部するための条件を設けたいなどとしていて、薬物使用の疑いのある部員を一掃する考えを示している。 一方、変わらないのは、学内のアメフト部の立ち位置だ。大学の「競技スポーツ運営委員会」は新しく発足する“アメフト部”について、「学生部」所属に格下げすることなく、これまでと同様に「競技スポーツ部」の所属とすることを決定した。これにより新生“アメフト部”は引き続き大学側から活動費が割り当てられ、寮の使用やスポーツ推薦なども適用されることとなる。 あるアメフト部の関係者が「廃部したあとにすぐ立ち上げ直すというのは“継続”とほぼ変わらないのではないか」と疑問を示すなど、今回の大学の判断には、学内外から批判の声が上がっている。この一旦の「廃部」という処分は、あまりにも場当たり的なもので、大いに違和感を覚える。
■アメフト部総勢120人の連帯責任は妥当だったのか…
廃部を受け日大アメフト部は「関東学生アメリカンフットボール連盟」から退会することとなり、今後、新しい部として加盟したとしても、トップリーグで戦えるようになるには最短でも5年かかるという。 総勢120人の部員のうちの一部が起こした不祥事が発端で、残りの真面目に活動してきた学生が、連帯責任という形で母体を失うことになった今回の廃部。最上位のリーグでプレーすることなどを目指し入部してきた学生にとっては、納得のいかない、厳しい状況が続くことになる。 「自分たちが問題を起こしたのだから廃部の決定は仕方がない」。こうした意見が根強くあるのも十分に理解できる。しかし、ここまで事が大きくなったのは、未だ処分が決まっていないアメフト部の監督責任者をはじめとする競技スポーツ部の人間や日大執行部全体の、ずさんな危機管理意識と後手後手にまわった対応に大きく起因しているのではないだろうか。