日大アメフト部は“一旦”廃部、一方で進まないガバナンス改革…取材記者が感じた日大への違和感とは
■廃部回避のポイントはなかったのか…
仮に大学のガバナンスと情報伝達が適切に機能していれば、もっと早い段階で寮の薬物問題の情報をキャッチし、学内調査と並行して警察と連携をとることができ、廃部以外の方法で問題解決ができたはずだ。 ずさんな初期対応といい、大学の上層部のこの問題に取り組む姿勢そのものにも問題点は多い。例えば、大麻とみられる植物片がアメフト部の寮で見つかってから、澤田副学長が警視庁に報告するまで12日間保管していたことや、林理事長が、植物片が見つかったと報告を受けていながら、「薬物は見つかっていない」と失言に近い発言をメディアに対して行ったことなどは、大学ぐるみで隠ぺいしようとしていると捉えられても仕方がない行動だ。 また薬物事件の対応をめぐり、林真理子理事長が澤田副学長に対し「補助金をもらうために、自浄作用を示すためにも辞任してもらうのがいい」などと暗に迫った発言内容が明るみに出たことで、薬物事件から一転、ガバナンス問題が浮き彫りになり、日本大学が一層、悪目立ちする形になってしまったといえる。
■当事者意識に欠け、準備不足が露呈した8月の会見
8月に行われた大学の説明会見では、林理事長をはじめ、酒井学長と澤田副学長が出席した。しかし、林理事長は終始、「競技スポーツ部」のことについてはわからないというスタンスで、「スポーツの方は学長にお聞きする立場で、はっきり申し上げて遠慮があった」などと、記者からの質問を次々と酒井学長や澤田副学長に振っていく様子が見られた。 日本大学は巨大な組織で、細部まで情報を把握することには限界もあるだろう。しかし自身が組織のトップである理事長を務める大学で起きた不祥事に関する説明会見だ。少なくとも理事長として準備不足だったことは否めない。
■「学生ファースト」ではなく「自分ファースト」
大学が設置した第三者委員会から報告書が提出された後、ガバナンスの改善に向けた建設的な話し合いや問題点を明らかにする議論を行う前に、日大の内部で、誰かに責任を押し付け“尻尾を切ろう”とする動きが見られたことにも大きな違和感を覚えた。 薬物事件の対応の責任や、林理事長との音声データ流出が“情報漏えい”にあたるなどとして、理事会は澤田副学長と酒井学長の辞任を決定した。 その一方、林真理子理事長については半年間の減給処分にとどまり、また情報漏えいを批判しながら理事会の内容をインターネットメディアで発信している理事もいるなど、理事たちに対する学内の批判の声も大きいと関係者は話す。 第三者委員会の綿引万里子委員長は、会見の中で、「林さんは学生ファーストと言っているが、学生ファーストになっていないと思います」と厳しく指摘した。 日本大学がいま一番取り組むべきことは責任の押し付け合いではなく、失墜した信頼と形を成していない学内ガバナンスをどうするかということである。日大は11月、最初のガバナンスの改善計画などを文科省に提出したが、「具体性に欠ける」として再提出を言い渡され、年の瀬も押し迫った時期、林理事長自らが文科省に出向くことを余儀なくされた。 文科省は「理事長の権限や責任の明確化」や「競技スポーツ部の管理体制の見直し」などについて、どう取り組むのかしっかりと工程を示してほしいと要望した上で、改善計画の進捗などをチェックするため、有識者による異例のフォローアップ体制を省内に発足することを決めている。