日銀総裁記者会見:円安リスクに配慮した慎重な発言に
フローの目標は意外
ところで、国債買い入れ減額計画での目標は、国債の残高削減のペースではなく、国債の購入額、つまりフローの目標とすると総裁は明らかにした。これは意外であった。 日本銀行の国債買い入れ・保有政策が国債の需給の変化を通じて長期金利に作用し、経済・物価に影響を与えるのは、フローの買い入れ額ではなくストックの保有額の変化によって決まると考えるのが自然であるからだ。 日本銀行が保有する国債の償還額が日々変化するなかで、買入額に目標を設定すると、残高削減ペースはその償還額の変化によって安定しなくなってしまう。これは、政策効果の予見可能性という観点から問題ではないか。
量的緩和策は終わらせない?
また総裁は、「超過準備ゼロが望ましいという前提では考えていない」と発言したことも意外であった。これは、国債買い入れ減額を進める中でも、長期国債を相応規模で保有を続け、超過準備を維持する考えを示している。これは、「量的緩和策」を終わらせないことを意味するのである。 日本銀行が2000年代に実施した前回の「量的緩和策」の効果については、経済・物価への影響は不明確であるが、超過準備を維持すること、つまり銀行に高水準の流動性を供給することが銀行の流動性リスクを低下させ、金融システムの安定に貢献した、との評価がなされた。しかし当時とは異なり、現在では金融システムは安定している。 金融政策を経済・物価に対して中立的にするのであれば、長期国債の保有額は大幅に削減し、超過準備の解消を目指すべきではないか。この点についての日本銀行の説明には疑問が残る。総裁は、最終的に適切な国債保有残高の水準は決め難い、と説明した。この説明で、国債保有残高の最終着地点についての市場の不確実性は大きく高まってしまったのではないか。 この2つの点において、日本銀行は先行する米連邦準備制度理事会(FRB)とは異なる独自のやり方で、バランスシート政策の正常化を進めようとしていると言える。