豪名門大学のマレーシア校での多様な経験が、旅行会社で挑戦する原動力に
──大学での4年間で一番大変だったことは何でしょうか? 2019年に入学し、数ヵ月後にコロナ禍となってしまったことですね。ロックダウン中は、オンライン授業に切り替わり、各国の友人も自分の国に帰ってしまい、私も日本に帰国しました。日本から2年ほどオンライン授業に参加し、ディスカッションもオンラインでおこなっていました。 友達との交流やさまざまな出会いなど留学生活の楽しい部分がなくなってしまったのは辛かったですね。コロナ中に他のやりたいことを見つけて大学を辞めたり、自分の国で別の大学に入り直すために去っていった人も結構いました。 ──高校での留学経験があるので 、英語の授業には問題なくついていけましたか? 友達との会話やディスカッションは問題なかったですが、大学の専門的な英語は、日本語でも難しい言葉も多く苦戦しました。先生の言っていることに対して「どう思う?」と言われたときには、思うように話せなくて、授業中に「当てられませんように」と祈っていることもありました。 課題も、授業ごとにエッセイが3本ほどあり、学期が進むにつれ文字数が多くなっていくので、提出日が重なるとかなり大変でした。 ──専攻はどのように選びましたか? 留学先では、日本で学べないような、海外ならではの授業を取りたいと思っていました。そのため、教養学部に入り、ジェンダー研究や映画史、PRの授業など、関心に応じていろいろな授業を受けました。 たとえば、PRの授業では、#(ハッシュタグ)の意義やSNSの役割について、映画史では、それぞれの俳優の芝居についてなど、どれもディスカッション形式で、答えのない勉強だったので、それがとてもおもしろかったですね。 2年次に専攻としてメジャーとマイナーを選ぶのですが、奥が深そうで日本であまり触れられていない学問という点でジェンダー研究を主専攻にしました。 ──生活面はどうでしたか? また勉強以外で取り組んだことはありましたか? コロナ前は寮に入っていましたが、戻ってきてからは一人暮らしをしてみたかったので、自分でアパートを借りて住んでいました。マレーシアの住環境は日本と違っていて、アパートといっても、キッチンや洗濯機、リビングルームは共用で、シェアハウスのような形でした。大学生以外との共同生活はいい刺激になりました。 課外活動では、大学のバレーボールチームに参加していました。マレーシアでは日本の男子バレーは人気があり、意外にも詳しい人が多くて。日本人は私一人だったので、日本のバレーボールのことをいろいろ聞かれて盛り上がりました。 ──就職活動はどのようにされましたか? 就職は日本でしたいと考えていて、現地で日本の就職活動を始めました。ボストンキャリアフォーラムに参加したり、オンラインでのサマーインターンを受けたり、CFNというバイリンガル人材向けの就職イベントで情報を得たりして、オンライン選考に応募していました。 具体的にやりたいことが決まっていなかったので、業界を絞らず、幅広く採用情報を見ていました。意識したのは、英語など自分の強みが生かせること、多くの人と関われる仕事内容、また、自分の興味があるものや好きなものにつながるかという観点でした。 留学中だと伝えるとオンライン面接に対応してくれる企業も多く、とてもありがたかったです。日本の友達に話を聞いたり、アプリを使って選考状況を確認したりと、あまり不便は感じませんでした。 JTBは、面接を重ねていくなかで、会社の雰囲気が自分にマッチしていると思いました。また、英語を生かせる業務内容や、私自身、旅行が大好きで、自分がJTBで働いているところを想像できた点も入社の決め手になりました。 ──2024年に入社されて、どんなお仕事を担当されていますか? 入社して半年になりますが、ビジネスソリューション事業部第八事業部という部署で、インバウンドを扱うチームに所属し、日本を訪れる外国人向けのツアー企画を担当しています。 ハワイやシンガポールなどさまざまな国から、10人~50人くらいの団体のツアーを担当することが多いです。 お客様から、ツアー内容や日本での時間を気に入ったというフィードバックをいただけるのが嬉しく、やりがいを感じています。 ──留学後になぜ海外ではなく日本で就職しようと思われたのですか? 海外で生活してみると、旅行ではわからない、生活して初めて見えてくる部分があるんですよね。 たとえば、時間についても、留学中は、先生が授業に10分遅れてきたり、友達と待ち合わせしても30分来なかったりということが当たり前にあって、時間にルーズなところが自分は耐えられないと思いました(笑)。銀行などで3時間待たされることも日常的にありましたしね。 「日本ってすばらしいな」と実感するとともに、自分には日本の生活が合っていることに気付かされました。ですので、卒業後は日本で働くことに迷いはありませんでした。ただ、海外の方と関わっていきたいので、今のこの仕事内容が合っていると感じています。 ──留学経験が仕事に生きていると思うのはどんなところですか? インバウンドのお客様は、かなり前から調整し準備していても、直前に内容の変更や人数の追加、新しい要望などいろいろなリクエストがきます。何が起こっても対応できるよう、旅行日程の1~2週間前は予定を空けて待機するようにしています。 予定にきちんと従う日本人とは違い、計画に縛られなかったり、そのときの気持ちを優先したりする傾向があるのだと思います。留学中にいろいろ大変な目にあった経験が私の対応力の原点になっており、日本人との感覚の違いに理解があることも役に立っています。 留学を通して培った、積極的に物事に飛び込む姿勢も生かせていると感じます。上司が「これやりたい?」など声をかけてくれるときに、私はいつも「やりたいです!」と手を挙げています。まだ経験は浅いですが、新しいことへの不安より、楽しみが勝る姿勢は、今後も仕事の上で大事にしていきたいと思います。 また、業務は基本的に英語でやり取りしているのでその点も留学経験はメリットですね。もちろんビジネスメールや見積もりなど大学では使っていなかった英語表現も多くあり、日々学んでいるところです。 ──最後に、これから留学を考えている人にアドバイスをお願いします。 留学の準備として、まず鍛えるべきは「生活力」だと思います。普段から自己管理ができること、特に勉強面で、学校や塾で出されるタスクや課題を真面目にこなすといった当たり前のことをやれるかが大事だと感じます。 なぜなら、留学中は親元から離れて、自分一人で行動したり、授業に参加したりすることになり、自分で対応する力が必要になります。英語の勉強などは準備としてもちろんやっておくべきですが、それ以前に、自立して生活できる力があるかが海外生活では鍵になると思います。 また、ちょっとしたきっかけで自分の世界が広がるのが留学生活だと思うので、友達づくりもそうですし、先生がくれたきっかけや部活動など、目の前にあるチャンスには飛び込んでみることをお勧めします。 私の場合、たとえば、最初の授業で友達になりたいと思った子に、「今話しかけなければ最後まで話せない」と勇気を出して話しかけたところ、そこから友人が増え、どんどん世界が広がりました。 貴重な海外生活の時間を有意義に使って、ぜひチャンスを自分のものにしてほしいと思います。
Maiko Kataoka