「子どもが欲しい思いは一緒なのに線引き…」同性カップルの生殖医療に“高いハードル” 推進する北欧デンマークの取り組みは?
■同性カップルが子どもを持つことは「自然なこと」に
「クリオス」などから精子の提供を受けて、実際に生殖医療を行うデンマークのクリニックを訪れてみると、壁一面に生殖医療で生まれてきた子どもたちの写真が飾られていた。こちらのクリニックでは、比較的安価な生殖医療を求めて、外国からデンマークでの生殖医療を求める人が増えていて、その大半が、独身の女性や、同性カップルだという。 クリニックを経営する医師のリサさんは、自身もレズビアンで、生殖医療で子どもを生んだ経験を持っている。リサさんは「私自身がそのプロセスを経験してきたということが、生殖医療を受ける人々の心を理解するのに役立っていると思います」と熱のこもった口調で話した。 リサさんは今、パートナーのリズさんと3人の子どもたちと暮らしている。同性カップルでも子どもを生み育てることは、自然な選択だったと話し、2人で話し合って、1人目の子どもはリズさん、2人目の子どもはリサさん…というように、交互に妊娠・出産をしたという。 リズさん「2人とも出産を望んでいたのは分かっていましたから、どちらが先にするかとなった時に、私はリサより2歳年上だから、最初は私…とするのが自然でした」 リサさん「生物学的な共通点を持たせたかったので、子どもたちは皆、同じドナーの精子を使って生まれています」 2人は子どもたちに、生殖医療をわかりやすく描いた絵本を使って、生まれてきた経緯を説明したという。生殖医療で同性カップルのもとに生まれてきた子どもたちは、その事実について「自然なこと」だと話す。 長男・トアさん「自分にとってとても自然なことだと感じています。不自然だと思ったこともないし、居心地が悪いとか感じたこともありません。僕には2人の両親がいて、彼女たちを愛しているので」 長女・エスターさん「学校のクラスの友達は、私に2人の母親がいることを知っているし、そのことを話題にすることはまったくありません。ほかにも同じように同性カップルから生まれてきた子どもが学校には何人もいます。問題になったことは一度もないですし、私は友人たちと同じように、普通の家庭の普通の子どもなんです」 同性カップルが子どもを持つことが“特殊なこと”ではなくなりつつあるデンマーク。対照的に、日本では生殖医療が受けられなくなる可能性があることについて聞いてみると―― リサさん「間違った方向の政策だと思いますし、見直されることを願っています。私たちは、外国の人々に対しても生殖医療に関するサポートを続けていきます」 リズさん「デンマークではすべての人たちが、同性カップルが子どもを生むことをごく自然なことだと考えているのは明らかです。しかし、制限を設けたり、法律で規制したりすると、家庭を築く人は少なくなるでしょう。そうすると同性カップルが子どもを持つことが特殊なことになって、人々の認識の中で、そのことが問題になるのだと思います」 2人は「子どもを持ちたいと願う全ての人に寄り添う政策が必要だ」と訴えている。