「子どもが欲しい思いは一緒なのに線引き…」同性カップルの生殖医療に“高いハードル” 推進する北欧デンマークの取り組みは?
■生殖医療の対象を限定する法改正へ …当事者の声、届かず
――去年から生殖医療への保険適用が拡大されましたが、同性カップルは保険診療の対象外になっていますね。 みさきさん「男女カップルは3割負担ですが、私たちは法律上の夫婦ではないので、全額負担となっています。経済的負担はかなり大きいです」 あいさん「同性カップルの子どもと男女カップルの子どもが持つ権利は変わらないはずですが、生殖医療を受ける上での違いはとても大きいと感じます」 ――超党派議員連盟が生殖医療のルールを盛り込んだ法律の改正案を議論していますが、そこには「生殖医療の対象を“婚姻関係にある夫婦”に限定する」と明記されています。改正法が成立した場合、同性カップルが生殖医療を受けられなくなってしまう可能性があります。 みさきさん「生殖医療が男女カップルと同性カップルで平等に受けられないことに疑問を感じます。子どもを持ちたい気持ちも手段も一緒なのに、線引きされて選択肢が奪われるのはとても悲しいです。子どもを持ちたい同性カップルは年々増えていますし、実際に、すでにたくさんの子どもが生まれています。その子どもたちの存在が考えられていない法案が議論されているという現状に不安を感じます」 あいさん「生殖医療に何らかのルールは必要だと思いますが、当事者の声が届かず決められてしまうのは本当に残念です」 (注:一般社団法人こどまっぷが2021年、出産・子育てをしている/しようと考えている性的マイノリティ534人を対象に行った調査では、「出産・子育てをしている(妊娠中含む)」と答えた141人のうち、半数以上の77人が第三者からの精子・卵子提供によって出産していた。こどまっぷによると、現在までにその数は増え続けているという) ――同性カップルの生殖医療に対して法整備がなければ、安全面も懸念されますね。精子提供を受けるにあたり、感染症のリスクや性犯罪に巻き込まれる可能性も指摘されています。 みさきさん「法整備がないために、リスクの高い方法を選択してしまう人もいると思います。精子ドナーを見つけるのもとても大変なので、素性の知らない人からもらうケースも増えてしまうかもしれません」 あいさん「そういったところにしか頼れない人もたくさんいると思います。生殖医療から同性カップルを排除すれば、親の安全も子どもの安全も守られないことになります」 みさきさん「誰もが安心して治療を受けられるようにする法整備が、生まれてくる子どもの福祉を守ることにもつながると思います」 ――同性カップル含め、誰もが選択肢を持てる社会を作っていくことが重要ですね。最後に、お2人は将来どのような家庭を作りたいですか。 あいさん「男女カップルに『なぜ子どもを持ちたいのか』と聞くことはあまりないじゃないですか。お互いを思い合う2人が一緒に住んでいて、子どもを持ちたいと考えるようになって、実際に子どもが生まれて育てていく…私たちにとってもそれくらい自然な流れなんです」 みさきさん「同性カップルから生まれたというルーツについては、子どもが小さいころから隠さずに伝えていきたいと思います。周りの子育てしている同性カップルを見ても本当に幸せそうなので、そこに不安はありません」 あいさん「子どもが成長するにつれて『自分の家族は周りと違う』と気づくと思いますが、そのときには『私たちが望んであなたを授かったんだよ』ということを伝えていきたいです」