「子どもが欲しい思いは一緒なのに線引き…」同性カップルの生殖医療に“高いハードル” 推進する北欧デンマークの取り組みは?
■生殖医療を推進するデンマークの取り組みは?
一方、女性の同性カップルが生殖医療を自由に受けられる国もある。北欧デンマークでは、回数制限はあるものの、在住者の40歳以下の女性であれば、同性カップルでも、独身でも、生殖医療を公的機関で無料で受けられるのだ。 私立のクリニックでの生殖医療は有料になるが、生殖医療を提供しているほかの国よりも比較的安価で受けられるため、不妊に悩む夫婦だけでなく、自らシングルマザーになることを選ぶ独身の女性や、第三者からの精子提供が必要になる女性の同性カップルにとって、生殖医療へのアクセスのハードルは低いという。こうした政策によって、デンマーク政府の調査では、生殖医療によって子どもを持つ同性カップルや独身女性は、この10年間で2倍に増加している。
■生殖医療推進の背景には「世界最大の精子バンク」
そうした生殖医療へのアクセスをさらに身近にしているのは、デンマークにある「精子バンク」の存在だ。デンマークの第二の都市オーフスにある世界最大の精子バンク「クリオス・インターナショナル」では、ドナー希望の男性から集めた精子を運動率などの基準で選別。基準に達したもののみを凍結保存している。 取材した日にも、いくつもの精子に注文が入っていて、巨大なタンクから凍結保存された精子が厳重な管理で運び出され、世界各国の生殖医療を行うクリニックに届けられていた。これまでに8万5000人の人々が「クリオス」から精子提供を受けて子どもを授かっているという。 デンマークには、「クリオス」のほかにも複数の精子バンクがあり、それぞれ世界各国のクリニックと提携を結んで、生殖医療の発展に寄与している。 デンマークの生殖医療について、デンマークの元保健相でもある「クリオス」の代表のニールセン氏は、「15年前から法整備が進んで、今も発展を続けています。文化的背景、宗教的背景、性的指向にかかわらず、子どもが欲しいと願う人々に対して、安全な方法でサポートすることは、とても崇高なことです」「これまで第三者の精子提供についてデンマークは進歩してきたので、今後は、卵子提供についても精子と同様に進めていかなければいけません」と話す。