「紅麹」問題の小林製薬、「物言う株主」から攻勢 刑事責任追及には高いハードル
「紅麹(べにこうじ)」成分のサプリメントの健康被害問題で、青カビ混入を「危害要因」と認識していなかったと大阪市の調査で指摘された小林製薬。地に落ちたブランドイメージを回復させようと改革を進めるが、課題の「創業家依存からの脱却」は進んでいるように見えない。主要株主である香港の投資ファンド「オアシス・マネジメント」は臨時株主総会の開催と新たな社外取締役3人の選任を要求しており、「物言う株主」からの攻勢にもさらされている。 【写真】「元の体に戻して」小林製薬の紅麹サプリによる健康被害を受けた関西在住の被害者の女性 小林製薬は一連の責任をとる形で今年7月に小林一雅会長と章浩社長の辞任を発表したものの、一雅氏が月額報酬200万円の特別顧問に就任したことで新たな批判を呼ぶ結果となった。 オアシスは「現経営陣のみに抜本的改革を委ねることはできない」として臨時株主総会の招集を請求。社外取締役3人と、業務や財産の調査者の選任を求めている。小林製薬は26日、オアシスが議決権比率で10・63%を保有する主要株主になったと発表しており、筆頭株主に迫る水準となっている。 健康被害を受けた人への補償対応として、小林製薬は10月31日時点で650件の申請を受け付けた。製品の回収や補償にかかる費用で約101億円の特別損失を計上しており、「追加の可能性もある」という。 同社は来年2月までに会社を立て直すための中長期の戦略の発表を目指しているが、消費者や株主を納得させることができるかは不透明だ。 紅麹入りサプリメントの健康被害問題を巡っては、今後は刑事責任追及の動きも焦点となりそうだが、ハードルは高い。 厚生労働省などは製品原料から検出された青カビ由来の「プベルル酸」が、腎障害を引き起こした原因物質と特定。26日の大阪市の調査では、サプリを製造していた工場での衛生管理の具体的不備も明らかになった。 食品や薬品の健康被害問題では、一般的に業務上過失致死傷罪の適用が検討される。同罪を適用するには、危険や被害発生を予想できたとする「予見可能性」と、必要な措置を講じれば結果を回避できたのに怠ったとする「結果回避義務違反」の双方の立証が求められる。 小林製薬は今年1月、サプリ摂取者が腎疾患を発症した事例を把握しながら3月下旬まで公表を控えており、対応の遅れが被害拡大を招いた可能性がある。ただ過失責任を問うには、製造過程でのカビ毒の混入可能性や、摂取すれば腎疾患を発症する流れを予見できたかが大きなポイント。小林製薬側に具体的な予見可能性があったとは現状では認められない。