【社説】保護司の活動 誰もが担える仕組み築け
刑務所や少年院を出た人の立ち直りを支援する保護司制度は、ボランティアの善意に頼り切っている。社会全体で支え、持続可能なかたちに改革すべきだ。 制度の在り方を議論してきた法務省の有識者検討会は、最終報告書を法相に提出した。法務省は来年の通常国会にも保護司法改正案を提出する。制度が始まった1950年以来の見直しとなる。 保護司は月に数回、自宅などで保護観察中の人と面接し、順守事項を守るよう指導したり相談に応じたりする。出所後の暮らしがスムーズにいくように、生活環境が更生に適しているか調査し、学校や職場と調整するのも重要な役目だ。 にもかかわらず、なり手不足が止まらない。現在は約4万7千人いるが20年間で2千人以上減った。60歳以上が全体の8割を占め、高齢化が進んでいる。制度を存続するには40代や50代の現役世代を増やす必要がある。 現行の保護司法は、保護司になる条件に「時間的余裕を有すること」を挙げる。保護司制度が明治の篤志家による出所者保護事業を源流とし、経済的にも時間的にも余裕のある実業家らが支えてきた歴史が背景にある。 最終報告書はこの発想を転換し、活動のために必要最小限の時間を確保できれば「適任者たり得る」とした。公募の試行も提言した。 時代とともに犯罪の内容も変化している。社会全体で支えるという制度の趣旨を考えれば、年齢も経歴も多様な人材に門戸を開いた方が活動の活性化も期待できよう。 焦点だった報酬制の導入は見送られた。「無報酬だからこそ対象者やその家族が心を許してくれる」などの慎重論が強かったためだ。 一方で、交通費などを含めた月数千円の実費弁償金については拡充を求めた。地域によっては数万円にも上る保護司会の年間会費、対象者との飲食代など活動費用が弁償金を上回り、持ち出しを強いられている人が多い。 公費助成を増やし自己負担をなくさなければ、せっかく志があってもためらう人が少なくないだろう。 5月に起きた大津市の保護司殺害事件を受け、検討会は対象者と面接する際の安全対策強化も提言した。 複数人での対応や、法務省職員である保護観察官の同席、オンラインの活用、自宅以外の面接場所の確保などを求めた。事件後、退任の意向を示した保護司もいた。本人や家族が安心できる体制を整えなくてはならない。 保護司制度は再犯防止にも効果があり、安心して暮らせる地域づくりにも貢献している。意欲を持つ誰もが担えるようにするには企業や職場、家庭、地域社会の協力と理解が欠かせない。 保護司の役割や意義を広く知ってもらう取り組みに、一層力を注ぎたい。
西日本新聞