「1秒あれば落ちる世界」柔道の不可解判定問題 レジェンドOGの意見が支持を拡げる理由「アクションをかけないといけない」【パリ五輪】
パリ五輪柔道男子60キロ級の準々決勝で、日本代表の世界ランク6位の永山竜樹がスペイン代表の同4位のフランシスコ・ガルリゴスに負けた一戦が未だ波紋を呼んでいる。 【画像】エアコンなしの質素なデザイン? パリ五輪選手村の全容をチェック 同試合では試合終盤に寝技に持ち込まれた永山を締め上げたガルリゴスが審判から「待て」の合図が出されたのに関わらず、締めを続け、結果として失神。永山は合図があったことで力を抜いたのだが、ガルリゴスが約6秒間も締め上げをやめなかったことで命の危機にまでさらされた。 日本選手団も猛抗議を行ったが、審判団は永山が失神したことを受け「締め技で意識を失った場合には自動的に一本となる」ルールを適用、「片手締め」で一本負けとなった。 今回のことに関しては柔道界のレジェンドからも様々な意見が上がる中、2012年ロンドン五輪柔道女子57キロ級金メダリストの松本薫さんも強くメッセージを発している。 松本さんは大会翌日の28日に放送された「サンデージャポン」(TBS系)に出演。パリ五輪柔道男子60キロ級で起こった「不可解判定」について私見を述べるシーンがあった。 番組では永山が60キロ級で銅メダルを獲得したことを伝えた上で、ガルリゴス(スペイン)との準々決勝で不可解な判定があったこと、永山がガルリゴスに絞められたシーンも取り上げた。 12年ロンドン大会、16年リオデジャネイロ大会と、2大会連続で五輪出場を果たした松本さんは「相手の選手が(主審の待てを)聞こえているかどうか分からないんですよ。歓声が大きいので、締め続けたかもしれない」とコメント。実際にガルリゴスは審判の「待て」が当初、聞こえなかったと認めている。 松本さんも「このとき審判は必ず『待て』と言って、(絞めが)続行されている様子であればすぐにアクションをかけなくてはいけない。危険なので。本当に危険な技なので」と元競技者だからこそわかる視点で締め技の危険性について語った。 同シーンに関しては「でも、これがちょっと遅れてしまって。本当に1秒あれば落ちてしまう世界なので、その間に(永山は)落ちてしまったのではないかと。(永山にとっては)なかなか納得のいくものではない」と4年に1回の大舞台に臨む選手の気持ちを慮った。 この松本さんの意見にはSNS上でも「本当にその通り」「審判は自分の待てに責任を持たないと」「相手が聞こえていなかったらなおさら、止めないと」など松本さんの意見への支持、審判の判断に改めて注目が高まっている。 すでに全柔連は今回の永山の判定に関して、国際柔道連盟(IJF)に文書で抗議したとしている。その中では「待て」後に、6秒間、相手が締め続けたことへの明確な説明はなかったという。 また主審以外にも試合を見守るジュリー(審判委員)についても不可解な判定があった場合の抑止力となるのか、複数チェックが機能していたかも焦点となっている。 永山は30日に自身のSNSに戦ったガルリゴスから会いに来て、謝罪の言葉があったとして、2ショット写真を掲載。「彼にとっても不本意な結果だったと思います。オリンピックの舞台で彼と全力で戦えた事を幸せに思います。誰がなんと言おうと私たちは柔道ファミリーです!」とつづり、円満解決を強調した。 当事者間のわだかまりは雪解けに向かっているが、五輪柔道の舞台では過去には大きな誤審騒動も起き、今回の大会でも様々な判定をめぐって議論が起きている。今一度、悲劇を繰り返さないための基準や方策が求められそうだ。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]