【#佐藤優のシン世界地図探索73】モスクワから見たウクライナ軍の「クルスク逆侵攻」
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * ――先日、佐藤さんはモスクワを訪れていたそうですが、あのレーニンが住んでいた「ナショナルホテル」に滞在していたのですか? 佐藤 はい。8月13日に羽田発、北京経由でモスクワに行きました。 ――お聞きしたいのは、ロシアの首都・モスクワから見たシン世界地図であります。 佐藤 ではまず、クルスク州の州都・クルスクの現状についてどう思いますか? ――ウクライナ軍(以下、ウ軍)が西側から武器供与を受け、最強のウクライナ兵による六個旅団で奇襲して、東京都を越える面積を占領しました。 佐藤 西側からは装備だけでなく、傭兵集団も提供されています。 ――傭兵集団?! 佐藤 はい。クルスクに進軍したウ軍にウクライナ兵は従属的機能しか果たしていません。主体はポーランド、ジョージア、イギリスからの傭兵集団です。 ――だからこんなに強いのですか? 佐藤 そうです。ウクライナは現在の戦いを「戦争」としていますが、ロシアは「テロ」として位置付けています。それは交戦時の傭兵に対する対応でも明らかです。 2022年、イギリス人傭兵2名とモロッコ人傭兵1名が、 ロシアが実効支配するドネツク人民共和国で捕虜になり、裁判で死刑判決が言い渡されました。その後、捕虜交換でイギリス人傭兵は、ウクライナ側に引き渡されました。本来、正規の戦闘員を捕虜にした場合、人道的な待遇を与えなければなりません。 しかし、傭兵は捕虜の地位を得ることはできません。殺人、傷害などの実行犯として刑事責任を追及することが可能です。要するに傭兵は、国際法上、保護の必要はないということです。だから、ロシア側は現場で全部、適切に処理をしているというわけです。 ――それって、捕虜にせず、見つけ次第射殺ですか? 佐藤 そういうことです。 ――さ、さすが対テロ作戦。 佐藤 そして、主導するのは軍ではなく、デュミン大統領補佐官です。国家反テロ委員会が前面に出ています。その指揮下に軍、内務省、連邦保安庁が入っています。 ――それは一番怖い対テロ部隊の布陣であります。 佐藤 要するに、皆殺しにするつもりです。本件に関してモスクワは全く動揺していません。 占領された地域についての状況は、ロシアにとって不利な情報を含め、正確に政府系テレビが報道しています。モスクワ市民たちは「なるほど。防衛というのは大嘘で、ウクライナの侵略的本質がよく分かった」と言っています。 さらに、「これはウクライナとの戦争ではなく、西側連合との戦争だ」「外国勢力と結託した白軍と同じだ。西側と結託したロシア人がウクライナ軍を自称しているにすぎない。それに対して、我々はロシア人を主体として、国家の独立を守る赤軍だ」と理解しています。 ――これはロシア革命の真っ只中で燃え盛っている時のロシアではないですか。