EVブーム終焉? 米で販売急失速…充電や消費電力の課題どう解決? 「日本は出遅れたと言われるが、10年後には評価されているのでは」
米バイデン政権が、新車販売のうち普通乗用車に占めるEV(電気自動車)比率を、去年出された当初案の67%から大幅に引き下げ、2032年までに35%とする目標を定めた。ハイブリッド車などの導入も事実上認める形となった。バイデン政権はEV推進の立場だったが、11月のアメリカ大統領選を見据え、引き下げの判断をしたとも見られている。急速なEV移行で負担を強いられる自動車メーカーからは規制緩和を求める声が出ていた。 【映像】“テスラユーザー”田村淳語る乗り心地 加えて1月と2月のアメリカでのEV新車販売台数は前年同月比を下回った。レンタカー大手「ハーツ」がEV約2万台の売却を決め、その収益の一部でガソリン車購入に再投資する予定だという。また、自動運転型EV「アップルカー」が約10年の開発に幕を閉じる方針が報じられたり、市場の成長を牽引してきた「テスラ」の株価も低下。EVブームの行く末について、『ABEMA Prime』ではモータージャーナリストの岡崎五朗氏と考えた。
■「EVブームは終焉というより、正常化してきた」
岡崎氏は「EVブームは終焉というより、正常化してきた」との見方を示す。「そもそもの目標が高すぎた。政府が決めれば世間は動くだろうと思っていたが、消費者はそんなにバカじゃない。自分が欲しいものを買う世の中で、そんな急には増えない」。 EV市場をめぐる方針転換では、メルセデスベンツが2月、2030年を目標としていた欧州での全新車販売のEV化を延期した。これには「メルセデス本社の当初のリリースには、『マーケットが許すならば』というただし書きが付いていた。企業として目標は出すが、市場が受け入れなければやらない。メーカーやEU政府も『流行だから、目標は高いほうがいい』と思っていたのでは」との見方を示す。
市場の変化に加えて、政治的な要因もあるのか。経済学者で慶應義塾大学名誉教授の竹中平蔵氏は、「バイデン大統領は当面の選挙のために、労働組合に配慮した。アメリカの政治的な動きはどうなるか」と問いかける。 岡崎氏は、トランプ氏が返り咲けば「EVの数値目標は低くなる」とみる一方、「バイデン氏が再選しても、以前の“67%”ではユーザーが許さない。EVに乗りなさいと国が強権的に決めると、市場メカニズムを混乱させる」とも指摘する。では、数値目標が下がることで、ハイブリッド車に強い日本メーカーに恩恵はあるか。「トランプ政権になれば、“自国ファースト主義”が強まる。それが日本に良いかと言えば、必ずしもそうでもない」。