実りの秋に(9月17日)
黄金色に輝く稲穂が収穫を待つ季節を迎えた。国内の今夏の平均気温は平年を上回り、2年連続で最も暑かったという。作物への猛暑の影響が心配されたが、会津産米の出来栄えは良いというから、ひと安心だ▼喜多方市内のある蔵元は、自社で醸造米を作付けしている。実りの秋、来月5日に「蔵開き」をする。酒蔵を開放し、多くの人たちに酒造りの現場を見学してもらい、収穫の喜びを共に味わう。1790(寛政2)年の創業以来、初の試みで、手塩にかけた自慢の一杯を振る舞う▼入社5年目、27歳の蔵人が実行委員長を担う。小さな子ども向けの催しを用意し、家族で楽しめるよう工夫を凝らす。訪れる人たちを、さらにどうもてなすか。老舗の魅力をどう伝えるか。若者の目線で知恵を絞る。これから先も、この場所でのれんを守るため、力試しに抜てきされた▼この蔵元は「地の米」「地の水」「地の技術」が詰まった「郷酒」を長年追い求めている。SDGsが叫ばれる昨今は「地のエネルギー」にもこだわり、太陽光やバイオマス発電を温度管理などに取り入れている。若き「地の人」が郷土の地の恵みをたっぷりと仕込み、伝統産業を熟成させる。<2024・9・17>