女子ケイリンで日本歴代最高順位! 太田りゆがパリ五輪の激闘を振り返る「持っているすべての力で走ってきた」
涙は「本気だったから」全部全力でやった結果に後悔なし
敗者復活戦の翌日、準々決勝を走りました。準々決勝はそれまでのレースと異なり、4位までの選手が勝ち上がりになります。今まで何度も敗退してきた“魔の準々決勝”。「4位でも勝ち上がれる」と楽観的に思うのは大間違いで、私にとって低くはない壁です。 スタートは後方から。私の前にオランダ、さらにその前にイギリスのエマ・フィヌケンがいました。エマはここ最近、「最強」と言っても過言はない選手です。レース中の動きで私はエマの後ろを選択してスイッチしましたが、並走でもつれる形になりました。それでも前から数えて4番目でレースを走っていました。「お願い!何とかここ4番手にハマらせて! お願い…!お願い!」と必死に4番手の位置で踏んでいき、何とか必死に4位を確保。いよいよ準決勝まで進むことができました。 準決勝は最後方からのスタート。ここは3位に入れば決勝進出というレース。1番前から後ろまで全員大スター選手の並び。さすがオリンピック、これがオリンピック。私はジェイソンから『前の動きに付いて、自分のタイミングで仕掛けなさい』とレース直前に作戦会議で言われました。本当にその通りの展開になり、ラスト1周で絶好の私のまくりの出番! 思いっきり踏んだ、全力で。あれ以上はない。「これで前に出切れれば残れる!出て!出ろ!踏め!踏め!お願い出て!」自分の中でそう思って走りました。たぶん日本で私を応援してくれている全国各地のみんなも、そう思ってくれていた瞬間だったと思います。でも出切ることは叶いませんでした。 あの日、あのレースの一番の勝負所。私は間違いなく強かったと思います。でも世界のトップたちはもっともっと強かった。まだ順位決定戦を走らなくてはいけないのに、涙がボロボロ出てきました。東京オリンピックの後から「悔しくても人前で泣かない」って誓ったのに。慰められることで満足してもどうしようもないから。なのに、涙が止まらなくて。メダルに本気だったから。それを手にするためにやってきたのだから。