F1分析|2023年F1マシンのパフォーマンス推移を振り返る。レッドブルはシーズン後半低迷? 決勝でのパフォーマンス低下が少ないアルファタウリ
2023年ももうすぐ終わろうとしている。同年のF1は、レッドブルが圧倒的な強さを誇り、22戦21勝で勝率95.45%……1988年マクラーレン・ホンダが16戦15勝で打ち立てた93.75%という伝説の勝率が、ついに破られることになった。 【動画】真っ暗闇の中で2.84秒……!? レッドブルF1が驚異のピットストップパフォーマンス レッドブルRB19の速さ、強さ、信頼性は、抜群であった。それゆえに、開幕直後から連戦連勝。しかしそのパフォーマンスを数値化してみると、シーズン後半には徐々にその優位性が失われつつあったことがよく分かる。これは、レッドブルがRB19への開発の手を緩め、早々に来シーズンに向けた開発にリソースをシフトしたことと無関係ではないだろう。
予選パフォーマンス比較
上のグラフは、予選でのマシンパフォーマンスを数値化し、折れ線グラフとして示したものだ。数値の算出方法は、各チームの2台のマシンのうち、予選でのセクターごとの最速タイムを抽出し、全チーム中最も速かったモノを100とし、その全セクターの平均を求め、さらにその全セクターの最速を改めて100として、そこからの遅れを算出したものである。 なお最速は常に100となるわけで、ずっと100だからといってマシンが進歩していないということを示しているわけではないことは、ご承知いただきたい。 これを見ると、シーズン前半、特にオランダGPまでは、レッドブルが他チームを圧倒している。カナダGPではウイリアムズとマクラーレンがレッドブルを上回るパフォーマンスと算出されたが、これは予選が雨が降ったり止んだりと難しいことが影響している。 レッドブルの速さが特によく現れているのが、シーズン中盤のオーストリアGP~オランダGPまでの期間。シーズン前半はフェラーリやアストンマーチンが僅差に迫ったが、シーズン中盤は他を0.5%ほど圧倒している。1周1分30秒のコースであれば、0.45秒のタイム差をつける計算である。しかも高速系であるレッドブルリンク、シルバーストン、スパ・フランコルシャンから、低速系とも言えるハンガリーやオランダまで、コース特性をあまり問わず速さを発揮……RB19の万能ぶりを示しているといえよう。 しかしその一方で、イタリアGP以降はその優位性が揺るいでいるのが分かる。イタリアでは、決勝こそ出し抜くことができたものの、純粋な速さという面ではフェラーリに先行されている。続くシンガポールでも、チーム曰くシミュレーションが間違ったことでマシンセッティングの方向性を見誤り、パフォーマンス面では下位に沈んだ。その後、日本、アメリカ、アブダビでは最速だったものの、他チームとの差はシーズン中盤ほどではなく、カタール、メキシコシティ、サンパウロ、ラスベガスでは、ライバルの後塵を拝した。 ただこれは前述の通り、レッドブルが今季のマシン開発をストップし、2024年マシン”RB20”にシフトしたため。それを考えれば、レッドブルが来季も開幕からかなり高い完成度になっているはずだと考えるのが自然であろう。 ランキング2位となったメルセデスは、シーズンを通じて0.5~1%の遅れで安定。フェラーリはそれ以上のパフォーマンスがあったが、この2チームを分けたのは、決勝レースでのペース差にあった。