F1分析|2023年F1マシンのパフォーマンス推移を振り返る。レッドブルはシーズン後半低迷? 決勝でのパフォーマンス低下が少ないアルファタウリ
予選から決勝のパフォーマンス差
上のグラフは、決勝パフォーマンスと予選パフォーマンスの対比をグラフ化したものだ。決勝レースのパフォーマンスも、前述の予選パフォーマンス同様、各セクターのベストタイムを抽出して算出したものだ。 これを見ると、フェラーリは決勝レースで大きくパフォーマンスを落としているのがよくわかる。そのパフォーマンス下落率の平均は、全10チーム中最大であった。 フェラーリはタイヤのデグラデーション(性能劣化)が激しいと言われて久しいが、これが実際に数値に現れた格好だ。これを解消できなければ、来季のランキングでも上位進出は難しいだろう。 最初のグラフを改めて見直すと、アストンマーチンはシーズン前半は3番目の予選パフォーマンスを発揮していたのが分かる。首位から0.5%未満の差にいることが多かった。しかしシーズン中盤以降は下落。後半には若干持ち直したものの、前半のような位置にはつけられなかった。 シーズンを通じて大きくパフォーマンスを引き上げたのはマクラーレンだった。数値上も、それがよく分かる。 開幕戦バーレーンGPの時点では、マクラーレンは全10チーム中最も遅い部類だった。しかしシーズン中盤からはその相対的なパフォーマンスが2~3番手に急浮上。終盤戦のカタールやサンパウロでは、最速を記録することもあった。 なお一般的にマクラーレンはオーストリアGP頃からパフォーマンスが上がり、段階的なアップデートが出揃ったイギリスから真価が発揮されたと言われているが、グラフを見ると、スペインGPの時点で既に3番目の戦闘力を誇っていたことが分かる。 このスペインGPでは、マクラーレンのランド・ノリスは3番グリッドを獲得した。しかし決勝レースでは、オスカー・ピアストリが13位、ノリスは17位に終わった。ただこれはノリスがスタート直後にメルセデスのルイス・ハミルトンと接触したことで、隊列の最後方に落ちてしまったことが原因。それがなければ、決勝でも好結果を手にできていたかもしれない。 マクラーレンはその3戦前のアゼルバイジャンGPでアップデート版のフロアを投入。当時はあまり効果がないと言っていたが、実際には効果があったと見るべきかもしれない。 アルピーヌがそれに続く位置につけた。まさにシーズンを通じて単独の6番手チームという状況だった。 純粋なパフォーマンスという点では、ウイリアムズとハースがこれに続く。ただこの2チームは、特に決勝でのパフォーマンス下落が大きかったチームだと言える。中には決勝でパフォーマンスを上げているように見えるグランプリもあるが、これはタイヤ交換のタイミングによるところが大きいだろう。 なおフェラーリは、この2チームよりも予選から決勝にかけてのパフォーマンス低下率が大きかった。どれだけの大問題かがよく分かるだろう。 アルファタウリとアルファロメオは、トップから比較すればパフォーマンスの差が平均2.5%落ちであり、厳しいシーズンを強いられた格好だ。特にアルファロメオは、シーズンを通じて下位に沈んだグランプリがほとんどであり、それだけ入賞には届きにくかったと言える。 一方でアルファタウリは、シーズン中盤に大きく低迷したが、シーズン後半にはその遅れを1%前後にまで回復させた。しかもアルファタウリは、特に予選から決勝にかけてのパフォーマンスダウンが小さいチームだった。この点では、全チーム中4番目という成績。基礎となるパフォーマンスが上がれば、決勝での好結果が期待しやすかったと言える。 もちろん、アメリカGP最終ラップでの角田裕毅のファステスト狙い”アタック”や、サンパウロGPでの予選失敗も、この数値を引き上げている。
田中 健一