<熊本地震>黄・赤紙の家はボランティアが手伝えない 孤軍奮闘の片付け
西原村では27日にも、公的なボランティアセンターが設置される。一方で、避難者たちはジレンマを抱えている。もっとも手伝ってもらいたいのは、部屋に散乱した家具や食器などの片付けだ。しかし、そもそも「赤紙」では、専門家に相談し、応急措置をした後に入るよう、「黄紙」では十分注意して入るよう指示している。自治体があっせんするボランティアは安全確保のために、「赤紙」「黄紙」の建物では手伝いができないのだ。 独居や夫婦二人暮らしの高齢被災者が多いこの地区で、ボランティアに家屋の中の片付けを依頼できないのは、復旧に向けて大きな痛手と考える避難者は多い。ある高齢男性は 「隣の益城町も南阿蘇村も地震の被害を受けているから、近くの血縁を頼れない人も多いのに」と話す。 中村栄希さん(33)は、会社の先輩に手伝ってもらいながら、86歳の祖母宅の片付けに励んでいた。中に入ろうとすると、 「玄関の中央部分は上から瓦が落ちてくる危険があるから、横から入ってきてください」と声をかけられた。 本震発生当初、父と二人で助け出し、祖母は一命を取りとめたという。縁側の屋根を突き破って落ちた瓦、ひっくり返ったタンス……。あまりの惨状にショックを受けるのではと、あれから祖母を家に入れていない。 壊れたものをトラックの荷台に次々と運び込みながら、自分が小学生時代に使ったランドセルが、あの大揺れに耐え、壁にしっかりとかかっているのを見つけた。 「ばあちゃんは、子どもや孫が使ったものを捨てられん人やけん、片付けもんが多か」と苦笑した。 中村さんは地元消防団に所属。祖母宅や自宅の整理がひと段落したら、自分で片付けられない高齢者宅の片付けを手伝おうと、ほかの団員たちと話し合っているという。「仮設住宅に入る方も多いと思うが、できる限り、自宅に早く帰ってもらいたいですからね」 (取材・文・撮影:木野千尋)