<独自>原発「依存度低減」は見直さず 政府、次期エネルギー基本計画 最大限活用と両立
政府が今年度中に見直す中長期のエネルギー政策の指針「エネルギー基本計画」で、原発について「可能な限り依存度を低減する」という記述を残す方向で調整していることが19日、分かった。データセンターの増加で拡大する電力需要に対応する脱炭素電源として、岸田文雄前政権が原発を最大限活用する方針を打ち出し、次期計画での取り扱いが焦点となっていた。原発の安全性を不安視する声に配慮しつつ、利活用を進める考えだ。 【アンケート結果】主要企業の5割が「原発活用を」 電力安定供給と脱炭素両立に不可欠 次期計画を巡っては2040年度の電源構成の原発比率をどう設定するかも焦点だ。現行計画で示した30年度の比率は20~22%で、これを超える水準に引き上げるのは困難だとの見方が多い。政府は年内に次期計画の素案をまとめる方針で、与党と詰めの協議を急ぐ。 現行計画では原発に関し「安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り依存度を低減する」と明記。複数の政府や与党関係者によると、原発の安全性を懸念する一部の意見を踏まえ、次期計画でも記述を残す見込みだ。 依存度低減の方針は東京電力福島第1原発事故後の14年に決定したエネルギー基本計画で盛り込まれ、その後の見直しでも維持されてきた。岸田前政権は22年に原発を最大限活用する考えを打ち出し、経済界は依存度低減見直しを訴えていた。 政府関係者は「震災前(約3割)からの依存度低減と、今後の最大限活用は両立し得る」と説明する。次期計画では、依存度低減の方針を維持しながら、同時に最大限活用を明記する見通しだ。 足元で原発の再稼働は安全性への懸念などから思うように進んでいない。国内33基のうち再稼働を果たしたのは13基にとどまる。現行計画の20~22%という比率を実現するためには、稼働基数を倍程度に増やす必要がある。 電力需要の拡大も見込まれ、40年度に20~22%に上積みするのは困難だとの声が強まっている。政府内では、既設炉の再稼働に加えて、建て替えも進めて約2割を維持するのが精いっぱいだとの考え方が浮上している。