ジャン=リュック・ゴダールの名言「ぼくはいつも…」【本と名言365】
これまでになかった手法で新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。ヌーヴェルヴァーグを率いたフランスの映画監督、ジャン=リュック・ゴダールが残した言葉とは。 【フォトギャラリーを見る】 ぼくはいつも土壇場になるのを待っている。 1950年代末、ヌーヴェルヴァーグと呼ばれる映画ムーブメントがフランスで勃興した。その新しさは、映画監督といえば撮影所で助監督などの下積みを経てからなるのが通例だった時代に、映画批評雑誌『カイエ・デュ・シネマ』の書き手出身監督たちによって担われたこと。つまり、ヌーヴェルヴァーグとは、純粋な映画ファンが映画監督になれると示した、初めての世代と言える。 『大人は判ってくれない』などで知られるフランソワ・トリュフォーとともに、このムーブメントを牽引した監督が、ジャン=リュック・ゴダールだ。長編デビュー作『勝手にしやがれ』以来、一作ごとに斬新な手法で映画の有様を更新し続けてきた彼の姿勢を、ひと言で集約するのは難しい。しかし、1985年に行われた以下のインタビューにおける「ぼくはいつも土壇場になるのを待っている」という発言は示唆に富む。つまり、撮影や編集も含めて、締め切りギリギリになって手をつけることが、ゴダールにとって「創造の喜びないし産みの喜び」なのだ。そればかりか、「自分がこの喜びを感じはじめるはずのときまで、必要な条件がそろうときまで、時間を過ぎ去るがままにしておく」とまで言う。 「かんべんしてくれ」とクライアントなら思うかもしれない。しかし、それを超えなければ、ゴダールのような前人未到の作品は作りえないと言うことだ。
ジャン=リュック・ゴダール
1930年生まれ。映画批評雑誌『カイエ・デュ・シネマ』の書き手として活動する傍ら、『勝手にしやがれ』で長編映画監督デビュー。主な監督作に、『気狂いピエロ』『女は女である』『カルメンという名の女』『ゴダールの映画史』『アワーミュージック』など。2022年に逝去。
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