入学者わずか3人の大学も 少子化時代の新設大学、大化けする可能性の見極め方
少子高齢化で大学の受験生が減少する一方で、新しい大学が誕生しています。なぜこのような状況下で大学が増えているのでしょうか。また、大学選びで新設大学を考える際には、どのようなことに注意したらいいのでしょうか。2024年に新設される大学を紹介しながら、教育ジャーナリストの小林哲夫さんが解説します。 【表】2024年に誕生する5つの大学
2024年、5つの新しい大学が誕生する。 これによって、日本の大学は815校(国立86、公立103、私立626)となる(大学院大学、通信制を含む。文部科学省集計)。上記5校はいずれも何もないところから大学をスタートさせたわけではない。前身、母体となるのは短期大学、専修学校、大学校などである。たとえば、北海道武蔵女子大は北海道武蔵女子短期大、東北農林専門職大は山形県立農林大学校、高知健康科学大は土佐リハビリテーションカレッジが前身となっている。これまでの専門(経営、看護など)を生かす教育を行う予定だ。短期大学や専修学校では定員割れを起こして学校経営で苦戦しており、4年制大学化によって学生を広く集めたい、という思惑がうかがえる。 新しい大学に学生が集まった時代があった。既存の大学では見られない先進的な取り組みに期待する「ご祝儀」性があったからだ。しかし、2000年代以降、大学が次から次へと誕生したため、新鮮味はすっかり失われてしまった。 高校の進路指導教員からすれば、教え子に新設大学を薦めるのは難しい。教育や研究のレベルがどのくらいなのか見当がつかない。先輩がいないので大学の文化を知ることができない。卒業生が出ていないので就職状況がわからない。つまり、新設大学は実績をまったく持っていないので、良し悪しに適切なアドバイスができない。 知名度がまったくない新設大学からすれば、受験生にまず大学名を知ってもらう。そして、特徴ある教育に興味を持ってもらう。そのためにさまざまな工夫を凝らしている。当然、メディア戦略には力を入れる。 21年開学の芸術文化観光専門職大(兵庫県豊岡市、公立)の学長には演出家、劇作家の平田オリザ氏が就任した。平田学長は自ら広告塔となって「新しい大学を、皆さんと共に創りたい」と呼びかけている。23年度(3期生)の入試状況は志願者数370人、入学者数86人(定員80人)となっており、順調である。