金属「ナトリウム」が高圧で透明な絶縁体となる理由を解明
惑星内部のように極端な高圧環境では、物質の性質は大幅に変化します。多くの物質は電気を通す金属のような性質を持つようになりますが、一部の物質は電気を通さない絶縁体になるなど、傾向に当てはまらない場合もあります。 今日の宇宙画像 ニューヨーク州立大学バッファロー校のStefano Racioppi氏などの研究チームは、高圧で絶縁体になることが知られている金属「ナトリウム」について、電子の配置をスーパーコンピューターを使って計算することで、絶縁体になる理由を探りました。その結果、従来の考えとは異なり「高圧電子化物(High-Pressure Electrides)」となることが絶縁体になる理由であることが判明しました。高圧環境下での物質の性質には謎が多く、このノウハウは他の物質の研究でも生かされるでしょう。
■低圧では金属、高圧では絶縁体となる「ナトリウム」
惑星内部のように極端な高圧環境は、通常の常温常圧環境と比較して物質の性質を大幅に変化させることがあります。例えば、水素は通常の環境では電気を通さない気体ですが、木星や土星の内部では電気を通す固体や液体である「金属水素」になっていると広く信じられています。金属水素は文字通り金属のように電気を通すため、木星や土星が持つ強大な磁場の源になっていると考えられています。 金属水素のように惑星内部の高圧でのみ存在できる物質は惑星そのものの性質を左右している可能性もあるため、高圧環境下での物質の性質を探ることはとても重要です。ただし、そのような高圧環境を実験室で再現するのは困難であり、場合によっては現状の技術では不可能なこともあります。長年の研究にも関わらず、金属水素の性質が “信じられている” と不確定な表現になっているのはその最たる例です。実験データの不足は、シミュレーションによって予測をすることも困難にさせています。 絶縁体の水素が金属水素となるように、高圧下の物質は金属化するというのが一昔前の一般的な見方でしたが、実際には金属から絶縁体となる物質も報告されています。その代表例が「ナトリウム」です。単体のナトリウムは常温常圧では不透明な金属ですが、高圧をかけると透明な絶縁体となることが2001年に予測され、2010年には実験的に証明されました。 ただし、ナトリウムがどのようにして透明な絶縁体となるのかはよくわかっていません。今回の研究以前では、ナトリウム原子の周りにある電子が高圧によって “絞り出され” て原子の間に嵌まり込んでしまい、周りから孤立して出られなくなることによって起こると考えられていました。自由に動ける電子がなくなれば電流が流れなくなる絶縁体になるため、実験データと一致します。しかし、この予測には比較的簡易的な計算に基づいているという問題がありました。