野球界は乗り遅れ? 新時代に必須の“指導資格” 200時間猛勉強…心身削られた「難関」
学びとは「わかる」ではなく「できる」…良い指導者がいないと選手は育たない
3日間の講習が終わると、受講者は専攻した競技の専門科目へ。軟式野球競技は、3日間の実技講習と2日間のオンライン講習があった。自ら上位の資格を得ようと集合講習に集まった人たちは、やはりコミュニケーションに長けていて克己心も旺盛だった。 あくまでも1年前の段階だが、野球では「コーチ3」の取得者が500人に満たず。受講内容が「コーチ3」の3分の1以下である「コーチ1」でも3000人強。それがサッカー界では、ケタが1つずつ多いという。 最後に、全競技に共通する事前課題(知識確認テスト)に触れておきたい。「コーチ3」の案内には、カリキュラムは「150時間」とあったが、筆者はそれでは足りず。受講料と引き換えに送られてきたテキストは、A4判で厚さ2センチ強。重さも相当だ。 各分野の専門家たちが各々で詰め込んだだろう内容は、およそ400頁に及ぶ。難解な専門用語や聞き慣れないカタカナ語がやたらに多い。もちろん転売禁止で、実際に売れるような「読み物」では決してないが、真摯に学びたい者には十分に応えてくれる「教科書」だった。 事前課題には100の設問もあり、最低でも6割の正解が必要。回答は3択でも、「教科書」の内容を理解していないことには選びようのない質問が大半だった。筆者がすべての課題を終えたのは昨年の9月で、11月から12月までの週末に講習を受け、事後課題を提出したのが年末。今年の3月にメールで「合格」の通知が届き、9月に登録料を振り込むと、10月1日付で資格認定証が送られてきた。期限は4年間となっている。 「求められる学びとは『わかる』ではなく、『できる』です。グッドな指導者がいないと、選手が育ちません」 これは軟式野球競技の実技講習で聞いた言葉。選手が育っていく現場も取材する記者である限りは、最低限は「わかる」状態でありたいと思っている。 〇大久保克哉(おおくぼ・かつや)1971年生まれ、千葉県出身。東洋大卒業後に地方紙記者やフリーライターを経て、ベースボール・マガジン社の「週刊ベースボール」で千葉ロッテと大学野球を担当。小・中の軟式野球専門誌「ヒットエンドラン」「ランニング・マガジン」で編集長。現在は野球用具メーカー、フィールドフォース社の「学童野球メディア」にて編集・執筆中。JSPO公認コーチ3。
大久保克哉 / Katsuya Okubo