野球界は乗り遅れ? 新時代に必須の“指導資格” 200時間猛勉強…心身削られた「難関」
「義務」ではなく「自ら」学びへ…学童野球界へ導入の「指導者資格」取得体験記
少年野球の現場に根強い旧態依然のコーチングを改善すべく、学童野球では今年から、大会出場に際して各チーム最低1人、監督・コーチへの公認指導者資格の保有が義務付けられている。実際に取得にはどのような苦労があるのか。日本スポーツ協会(JSPO)の指導者資格「コーチ3」を3年かけて取得した記者が、自身の成長と学びのプロセスを振り返り、コーチングの奥深さ、また日常生活への影響について綴った。 【動画】“押し付け指導”を変えたい令和の大人必見 小学生が生き生き発言する全軟連動画 ◇◇◇◇◇◇◇ 「スピード」の定義とは。「パワー」は筋量に比例するのか、どのような数式で示されるのか……。 スポーツ報道の世界に身を置いて四半世紀。日常的に記事を書いているというのに、こうした問いへのまともな答えが出てこない。己の身のほどを知ったのは、3年前のことだった。 きっかけは、ある人のススメでJSPOの指導者資格「コーチ3」に自らトライしたこと。この資格は、小・中学生のカテゴリーの監督など(コーチ2)の上位にあたる。協会の案内には「トップリーグや実業団等のコーチとして、全国大会レベルのチームやプレーヤーのコーチングを行うための資格」とある。 結果として、筆者はその認定証を得るのに3年を要した。全競技共通の事前課題から講習へ進み、専門競技(軟式野球)の講習を経ての事後課題。すべてを終えるのに少なくとも200時間、受講料は3万円をくだらない。どの過程もヘビーだったが、冒頭のような基礎的なものから、知識がある程度、整理された。科学的な根拠を伴う理論や実技と、その進化に刺激も受けた。また、コーチングのスキルを実体験したことで、日々の生活でも思わぬプラスを感じている。 暴力根絶の意識と、継続的な学びによる指導の質の担保。これに根差してJSPOの現行システムができたのは2019年だという。資格はカテゴリーやレベルに応じて7種類。申し込みは年度単位で、学ぶボリュームや費用にも段階があるようだ。 野球界での「指導者資格」は、ごく最近まで名ばかりだった。筆者は20年ほど前、小学生の息子がいる学童チームで背番号「28」のコーチとなったが、登録申請と半日程度の受講で認可された記憶がある。それが今年度から、全日本軟式野球連盟と各支部の大会参加に、チームにつき1人以上の有公認資格指導者が必要となった。同様に義務化されているのは、15歳以下の軟式と硬式の一部に限られる。模範であるべきプロ野球が、この手の方面にノータッチというのも、お隣のサッカー界と決定的に異なる点だ。