野球界は乗り遅れ? 新時代に必須の“指導資格” 200時間猛勉強…心身削られた「難関」
コーチングのカギ…コミュニケーションスキルの必要性を嫌でも実感
ルールだから仕方なく――。全競技共通の講習で筆者が出会った人たちには、そういう後ろ向きな考えはなかった。受講者は全国各地にいて、多くは身銭を切って学びの場へ。メジャー競技に限らず、五輪種目にない競技の指導者や、育成スクールの講師、部活動の顧問、栄養士、大人の趣味のチームの監督など、バックボーンもそれぞれ。 「チームがまとまらない」「選手が言うことを聞かない」「保護者が介入してくる」「目上の指導者の暴言がひどい」など、持ち寄る悩みは似たり寄ったり。自身の指導にも怪しさや不満を感じており、目の前の選手たちをより良くサポートできるように学びを深めたい、という声も多く聞かれた。 筆者にとって難関だったのは、全競技共通のオンライン講習。講義を聞いてレポートにまとめるような、凡庸なスタイルではなかったからだ。時間は金曜から日曜までの連続3日間で、午前8時過ぎから午後7時あたりまで。ランチタイムと小休憩以外は頭をフル回転させ、気も相当に使った。 講習の軸はグループディスカッション。各自の知識や境遇などは留め置いて、人の意見を否定せずに、ともに学ぶ。この基本姿勢を全体で確認してから、アドバイザーが巡回する下で、適当に振り分けられた数人単位の小グループで大半を進行する。 グループ内では、1分間ずつの自己紹介と、タイムキーパーや進行役などの役割分担からスタート。1コマは90分から2時間程度で、与えられたテーマに沿って全員が意見を発して話し合い、定刻までにとりまとめてから全体での発表へ。ほぼ初対面の人たちと、この繰り返しになる。 人見知りや尻込みする時間もないほど、進行が早い。どの受講者も前向きで真剣なので、足を引っ張れないとの思いが先に立つ。1日を終えると食事もできないほどぐったりで、それでも翌日に嫌な汗をかかないようにと予習と復習に念を入れた。 コーチングのガギとなる、コミュニケーションや時間の管理。そのスキルとして「傾聴」や「問いかけ」などを学んだが、3日間のグループワークで受講者自身が相当に磨かれるようだ。筆者は人から話を聞きだすのも仕事だが、私生活でも自然にできるようになってきた気がする。