伝統文化・産業を未来へ 京都市で大規模コンペ
日本の「千年の都」として愛される京都。 その伝統から紡がれた美と技の世界を紹介する京都伝統産業ミュージアム(京都市左京区)が、日本古来の文化・産業を未来へ伝えることを目的に、新たなコンペティションを開催する。同市で大規模な作品コンテストが開かれるのは初めてといい、八田誠治館長は「全国から若手の職人を幅広く募り、伝統産業をさらに盛り上げていきたい」と意気込んでいる。 【写真】京都伝統産業ミュージアムの展示コーナー ◇伝統素材・技法を活用 新コンペ「TRADITION FOR TOMORROW」では、伝統工芸の手法を生かしつつ、現在の生活様式やニーズに応える作品を募集。全国の芸術系大学、専門学校の学生らを対象とした学生部門と、京都ゆかりの伝統工芸作家、職人ら向けの一般部門を設定した。応募締め切りは11月末。来年2月から同ミュージアムで展示・審査が行われ、グランプリには賞金100万円が贈られる。 八田館長は日本の伝統産業に関して「和の文化、特に『お茶』や『お花』を中心とした日常の中の文化が衰退しているように感じる」と指摘。その上で「伝統的な素材・技法は、保存するだけでなく、それを活用してこそ未来へ継承することができる」とコンペの意義を説明する。 ◇担い手育成、外国人も視野 ミュージアムでは、西陣織や京友禅などの染織品から京焼、京漆器といった工芸品まで、伝統産業とその背景を紹介している。伝統的な素材・技法を現代につなげるのが狙いで、コンペに先駆けて、展示コーナー「Tradition Meets Today」を新設、新たな作品づくりに挑戦する若手職人や工房をPRしている。10月には京焼、清水焼や京漆器の職人、作家によるコーヒーカップやマグカップなどを集めた展示・販売会を開いた。 ミュージアムを運営する京都産業振興センターは、京都市のほか、京都商工会議所、地元の地方銀行などが出資する半官半民企業。山本達夫社長は「行政は補助金を出すことができるが、限界がある。事業会社であれば、買い付けも販売も手掛けられる」と強みを生かして伝統産業支援を続ける考え。また、将来の担い手の確保について「京都は伝統産業に興味を持つ若者が集まりやすいので、こうした人材を育てていく。日本のモノづくりに興味を持ってくれる外国人も多く、彼らが突破口になるかもしれない」と語った。