「俺、もう辞めるわ」…安倍元首相に「国士」とまで言わしめた葛西敬之を退任寸前まで追いやった壮絶な「ネガティブ・キャンペーン」
安倍元首相が国士と賞賛した葛西敬之が死の床についた。政界と密接に関わり、国鉄の民営化や晩年ではリニア事業の推進に心血を注ぎ、日本のインフラに貢献してきた。また、安倍を初めとする政治家たちと親交を深め、10年以上も中心となって日本を「事実上」動かしてきた。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 本連載では、類まれなる愛国者であった葛西敬之の生涯を振り返り、日本を裏で操ってきたフィクサーの知られざる素顔を『国商』(森功著)から一部抜粋して紹介する。 『国商』連載第31回 『「葛西、君と闘う」...「ばら撒き」「脅迫」「張り込み」松崎明が用いた「汚すぎる」葛西敬之への反発』より続く
ばら撒かれた「不倫写真」
葛西とJR東海社員との通話時間は40分ほどだ。その間、葛西本人は生きた心地がしなかったに違いない。葛西スキャンダルはJR各社だけでなく、国鉄清算事業団や運輸省(現国土交通省)幹部、新聞社などにもばら撒かれた。 かつて政府の国鉄再建監理委員会の事務局に派遣された黒野匡彦も、このスキャンダルに接した一人である。「葛西さんがいなかったら国鉄改革はできなかった」と称賛する。その大きな理由が旧動労の松崎との対処のあり様だという。 「葛西さんは東海から革マル派を追い出した。そのとたん、アンチ葛西のキャンペーンを張られたのです。(不倫の事実が)本当にあったのか、本当はなかったのか、そこはわからない。われわれだったら圧倒されるところを、彼は揺るぎませんでした。組合が撮った写真は僕のところにも送られてきましたから、今も持っています。ゴルフ場で二人が睦まじくゴルフをやっている写真。名古屋のお医者さんの奥さんとゴルフをやったとか、ホテルで待ち合わせしたとか、あくまでも組合の言い分ですが、そういうキャンペーンをやられたんです。昔のJR東の本社の前で、JR東海新聞という印刷物が配られていました。とうぜんJR東海の記者会見でもその話が出る。そしたら彼は『私のプライベートな話ですから、こういう場で話すべきことではありません』と肯定も否定もしないんです。それでずっと通しちゃった。政治家には到底そんな芸当なんてできないでしょう。けれど、彼にはそれで通すだけの胆力がある。すごい男だと改めて感じたものでした。だからキャンペーンはそれっきりだったですね」
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