【米国株ウォッチ】テキサス・インスツルメンツ分析、株価には割高感?
米国の半導体開発大手テキサス・インスツルメンツ(ティッカー:TNX)の株価は、ナスダックが年初来で10%近く上昇しているのに比べ、年初来で約7%しか上昇していない。半導体業界全体では、AIチップの需要急増やパーソナルコンピューティング市場の回復に牽引され、ここ数四半期は循環的な低迷から回復しているが、同社は主要顧客の購入縮小により逆風に直面している。 第1四半期の売上高は前年同期比約16%減の36億6000万ドル(約5692億円)、1株当たり利益は1.10ドルとなり、アナログ半導体と組み込み製品の両分野で売上が低迷したことが重荷となった。 アナログ半導体と組み込みシステムを含む同社の製品ラインナップは、半導体業界の他の部分と比較して、マクロ経済要因への依存度が高いと見られている。自動車関連では、コロナ禍の供給逼迫を受けて在庫を積み増した後、顧客は既存の在庫を消化しつつある。 さらに、アンプやパワーマネージメントデバイスなどのアナログ製品、産業オートメーション向けに設計されたプロセッサーやマイクロコントローラーなど、産業用顧客向けの製品も多数製造しており、この分野では前四半期比で1桁台後半の減収となった。 通信機器分野の顧客も購入を縮小しており、5G配備のペースが冷え込むなか、売上高は25%減少した。同社の利益率も圧迫されており、売上総利益率は前四半期比320ベーシスポイント減の66.1%だった。利益率は、収益基盤の縮小に加え、工場出荷台数の減少に伴う生産コストの若干の上昇が影響している。 もう少し長い期間で見ると、テキサス・インスツルメンツの株価はほとんど変化がなく、2021年1月初旬の165ドルの水準から現在180ドル前後までわずかに動いているだけだ。全体として、インデックスに対するTXNのパフォーマンスは冴えない。2021年のリターンは15%、2022年はマイナス12%、2023年は3%だった。 これに対してS&P500のリターンは2021年27%、2022年マイナス19%、2023年24%であり、TXNは2021年と2023年にS&Pを下回っている。ただ、これはマイクロソフト(MSFT)、アップル(AAPL)、エヌビディア(NVDA)、グーグル(GOOG)、テスラ(TSLA)、アマゾン(AMZN)でも同じことが言える。 原油高と金利上昇という現在の不透明なマクロ経済環境を考えると、TXNは2021年および2023年と同じような課題に直面し、今後1年間S&Pをアンダーパフォームする可能性がある。 次の四半期で、テキサス・インスツルメンツは売上高で36億5000万ドル(約5675億円)から39億5000万ドル(約6142億円)、1株当たり利益は1.05ドルから1.25ドルを計上すると見込んでいる。 テキサス・インスツルメンツにとってプラス材料もある。半導体の生産量は、自動化の進展に伴い、今後数年間は産業分野で堅調な伸びが見込まれる。自動車部門も、コネクテッドカーや自動運転車によって力強い成長が見込まれている。2023年における同社の売上高の約75%は、産業用部門と自動車用部門が占めており、この2つの最終市場は2013年以降、年率10%で拡大している。この傾向は今後も続くだろう。 同社はまた、米国における300mmウエハーの製造能力を拡大するために多額の投資を行っている。これは、同社が地政学的リスクを軽減すると同時に、効率性と長期的競争力を向上させるのに役立っている。 TNXは予想PERは約45倍付近で推移しているが、これはやや高いと当社は見ている。当社はTNXの目標株価を米国時間5月9日の終値である185.32ドルを多少下回る、1株当たり約175ドルと評価している。
Trefis Team