日系ブラジル人3世の落語家らむ音さん 日本で活躍、3カ国語で挑戦 ジャーナリスト 高橋幸春
古典あり新作ありで、多くの人を楽しませるのが落語。ネイティブではないというハンデを乗り越え、一人の女性噺家が活躍している。代表作は『三カ国語寿限無』。その傑作が誕生したワケやいかに。稽古話の苦労など交え、らむ音さんに聞いた。(月刊『望星』5月号に掲載、同編集部の了承を得て転載) らむ音さんの「3カ国語寿限無」はここから見られます! 落語家 らむ音 ●らむね 1993年横浜生まれ。父は日系ブラジル人2世、母は3世。2016年、武蔵野美術大学卒業。17年、らぶ平師匠の落語を聞いたのをきっかけに弟子入り。18年初高座、22年二つ目に昇進。23年、ZABU1グランプリ(BSフジ)で準優勝。古典落語の他に、日本語、英語、ポルトガル語を取り入れた作品もある。
多数の言語が飛び交う環境
――簡単にルーツを教えてください。 父方の祖父は群馬県出身で戦後ブラジルに渡りました。祖母も青森県からの戦後移民です。母方は、沖縄県出身の曾祖父と熊本県出身の曾祖母がブラジルで出会っています。記録は残されていませんが、二人とも初期移民だと思います。 ――ご両親は? 父はサンパウロ市出身で、サンパウロ大学でロボット工学を学んでいました。母は勉強するためにサンパウロに出てきて、そこで出会ったそうです。父の来日は1989年で、デカセギというより、アルバイトで学費を稼ぎ、日本の大学院で学ぶというのが目的でしたが、アルバイトで学費を稼ぐのは困難だと判断し、友人と二人で解体業の会社を起こし、現在は土木建設の会社を経営しています。 ――らむ音さんは日本生まれですね。 そうです。妹二人も日本で生まれ、日本の学校に通って勉強してきました。日系3世の母は、来日した頃は、日本語をまったく話せず、家族間の会話も当然ポルトガル語です。父の会社で働いている人も外国籍の人ばかりで、ブラジルはもちろんペルー、インドネシア、サウジアラビア、フィリピンなど、いろんな国の人がいました。休日のバーベキューパーティーでは多数の言語が飛び交う環境で育ちました。