会場は日本なのに…中国国内“ライブ禁止”のロック歌手の歌を聞くためだけに多数の中国人来日し涙 日本人が知らない“中国”の一面
4月下旬から約10日間かけて、あるロック歌手のツアーが日本全国5都市で行われた。全会場でチケットが完売し、1万人もの観客が涙を流し熱狂したが、コンサート会場にいた客の大半は中国人だった。しかもわざわざこのコンサートを見るためだけに来日した人も多い。彼らはなぜ、多くの金と時間をかけ、わざわざ日本に来たのか?その答えは、彼らの視線の先で歌う1人の中国人男性の歌に込められている。その歌手は、共産党の監視の目が光る中国国内では、公の場で歌う事ができない。この事実を知る日本人は、ほとんどいない。 【画像】中国では歌えない…来日中国人の涙を誘った李志 以下の文章は、東京大学のある中国人訪問学者が執筆し、東京大学大学院の阿古智子教授が翻訳したものを編集した記事である。
満場の観客が流した涙
数千人規模の会場は満員。そのほとんどが中国人。涙を流している人が多い。 日本ではほとんど知られていない45歳の中国人ロック歌手が、ツアーのため来日し、4月20日の大阪を皮切りに名古屋、福岡、仙台、東京で公演を行った。ツアーはどの回も満席だった。 最終公演の東京では、歌手が最後に「自分のような農家の息子が日本でコンサートができるなんて。それになんと、チケットは完売だったんだ!」と語ると、観客は笑い、涙を流した。 一部の観客にとって、このコンサートに来るのは、そう簡単なことではない。 現場で観客にランダムに聞いてみたところ、80%以上が航空券を購入し、わざわざ中国から日本に来ているようだった。 さらに、中国ではチケット購入用のウェブサイトにアクセスできないため、コンサートの予約をするためには、VPNなどでネット規制を回避してサイトにアクセスしてチケット代を払い、さらに、ビザの申請、航空券の購入、ホテルの予約もしなければならない。そこまでして、初めてコンサートに来ることができるのだ。 実際に大阪のコンサートに行って中国に一旦帰り、その後また仙台に行き、東京に行ってはまた中国に戻るというように、日本と中国を行ったり来たりするのを2、3回繰り返している人もいるという。 彼らに話を聞くと、「どの会場でも泣いていた」「曲が始まるとすぐに、涙が顔に溢れた」という。 誰かが冗談で、どのコンサートも「大規模なお葬式の会場」のようだったと言った。