健康診断はなぜ会社の義務か? 意味理解し上手に活用を 健康経営の新時代(7) 健康企業代表・医師 亀田高志
「健康問題を悪化させる恐れがあれば、働き方を調整」
職場が1年に1回は実施している定期健康診断ですが、読者の方々はどのように捉えているでしょうか? 「正直、面倒くさい」 「毎年、同じ問題を繰り返し指摘されて嫌だ」 「保健指導の呼び出しを受けてもスルーすることにしている」 「産業医に病院を受診するように諭されても、うれしくないし、ありがたくもない」 という意見の人が少なくありません。 「自分の健康は自分が一番分かっている」とか、「健康や医学的な問題はプライバシーじゃないの?」という意見もあるでしょう。 しかし、65歳を超えて70歳まで、あるいは75歳まで働くことが標準になる時代はもう目の前です。そうした時代だからこそ、自分の健康を守るために、健康診断の本当の意味を知っておかなければなりません。 職場で行われる健康診断は「単なる無料のメタボチェックではない」ということをご存じでしょうか? 一般定期健康診断を実施すること、その後、何らかの問題がある、その疑いがあった場合に保健指導を行ったりすることに対して、会社が行う義務として法的な定め(労働安全衛生法第66条)があります。一方、働く人にも受診する義務があり、保健指導を受け、健康管理に努めることが同法で求められています。会社が行う保健指導の中には再検査、精密検査、治療のために医療機関に受診するよう勧めることも含まれます。 こうした部分だけを見ると職場の健康診断は、従業員の健康を強制的にチェックし、飲酒、喫煙や栄養、運動まで口やかましく言うことだけに見えてしまうかもしれません。 けれども健康診断を会社が行う真の理由は「従業員を今のまま働かせて、健康を害したり、悪化させたりすることがないか?」を確認することにあります。その背景に「従業員に健康問題があり、悪化させる恐れがあれば、働き方を調整する義務が会社にある」という法的な要求事項があるからです。 職場の健康管理に携わるようになって30年近くになりますが、いまだに企業等で働く人たちのほとんどは、こうしたルールの存在を知りません。