富山県水産研究所のノドグロ「雌化」割合増 大豆成分配合の餌で稚魚飼育
高級魚アカムツ(ノドグロ)の放流に取り組む県水産研究所(富山県滑川市高塚)は、人工的に育てた稚魚が雌になる割合を高める技術確立に向け、一定の成果を得た。従来は100%近くが雄になっていたが、大豆イソフラボンを餌に混ぜて食べさせることで1割が雌になった。同研究所は、海に放流する稚魚を卵から育てる「栽培漁業技術」の研究を進めており、水揚げまでのサイクルを確立することで漁獲量向上につなげていきたい考えだ。 アカムツは水深100~200メートルに生息する。時期によっては1キロ当たり1万円以上で取り引きされるが、県内の漁獲量は年間10~20トン程度と少ない。同研究所は漁獲量を増やして漁業者の収入アップにつなげるため、2011年に栽培漁業技術の研究に着手。13年度に初めて稚魚の育成に成功し、年間数万匹を富山湾に放している。 ただ、アカムツの生態は不明点が多い。雌の方が大きくなる傾向が高く、漁獲量や取り引き価格アップが期待できるものの、人工的に育てた稚魚のうち98%ほどが雄になってしまうという性別の偏りが課題になっている。雄ばかり放流することによる生態系への影響も懸念される。
同研究所は他の魚種の「雌化技術」を参考にしながら研究を進め、ウナギやチョウザメの養殖に活用されている大豆イソフラボンを用いた手法に着目した。21年から放流サイズの5センチに育つまで、粉末の大豆イソフラボンを餌と一緒に与える方法を取り入れたところ、1割が雌に成長した。 福西悠一主任研究員は「飼育者に負担をかけず、雌の割合を増やす方法が分かったのは大きな成果」と強調する。将来的に雄と雌の割合を5対5にする目標を掲げており、さらに研究に取り組む考えだ。 雌の割合を高める技術に加え、同研究所はこれまで卵から稚魚に安定して育てる方法や、ふ化から放流までの飼育期間を5カ月間から3カ月間に短縮するなど、さまざまな生産技術を確立してきた。地域水産業の発展に大きく貢献したとして、7日に長野市で開かれた全国水産試験場長会全国大会で研究チームが会長賞を受賞した。 代表の福西主任研究員は「地元漁業者や水産庁をはじめとした多くの協力のおかげ。受賞を機に、事業化に向けてさらに研究に取り組み、地域に貢献したい」と話している。