「陰毛が生えている部位がかゆい…」放置してはいけない〈陰部のかゆみ〉と隠れた疾患とは|医師が解説
下着の蒸れや体調によっても生じるデリケートゾーンの痒み。考えられる原因や放置してはいけない場合について、医師が解説します。 〈写真〉「陰毛が生えている部位がかゆい…」放置してはいけない〈陰部のかゆみ〉と隠れた疾患とは ■陰毛が生えている部位が痒くなる原因 ■■蒸れによるもの 陰毛のかゆみは、下着による蒸れや肌の乾燥で起こることの多い症状です。 陰毛のある部分は、下着や衣類に覆われていることから蒸れやすく、汗による刺激や雑菌の繁殖などによってかゆみが引き起こされる場合があります。 夏場などの季節では、女性においては生理中が特に蒸れやすくなります。 下着の化学繊維や成分によっては相性が悪く、かぶれる場合もあるため、自分に合った成分の下着を身に着けるようにしましょう。 ■■性病によるもの 陰毛のかゆみは、毛じらみ症によって引き起こされることもあります。 毛じらみ症とは、シラミの仲間であるケジラミが寄生することで発症する感染症であり、主に陰毛に寄生し、皮膚から吸血されることによってかゆみが起こります。 毛じらみ症の場合、陰毛の直接接触による感染が原因なので、性行為を介する性病が原因であることが多いといわれています。 ■■感染症 かゆみが続くと日常生活に支障をきたすほか、掻きむしったりして毛嚢炎(毛包炎)など感染症を発症する可能性もあります。 毛嚢炎(毛包炎)とは、毛穴の奥にある毛を産生する部分(毛包)に炎症が起きた状態のことであり、赤い丘疹(ぶつぶつ)や、中央に膿うみを持った丘疹が現れるのが特徴です。 ■■乾燥によるもの 肌の乾燥は、加齢や女性ホルモンの減少、ボディソープによる刺激など、さまざまな原因によって起こります。 肌が乾燥すると刺激に対して弱くなることから、ちょっとした刺激で炎症が起こったり、陰毛が生えている部位が痒くなる症状が誘発されやすくなったりします。 乾燥を防ぐためには、日常的に正しい入浴とスキンケアが大切です。 入浴時に硬いタオルなどを使って強くこすると乾燥の原因になるので、肌への刺激が少ないボディソープと柔らかいタオルなどを使用して優しく洗うようにしましょう。 また、入浴後は、乾燥が気になるときに、ボディミルクなどの保湿剤を使ってスキンケアしましょう。 ■放置してはいけない陰部の痒み:性病によるもの 放置してはいけない陰部の痒みの原因のひとつとして、性病によるものが挙げられます。 ■■毛じらみ症 陰毛の直接接触によって、毛じらみ症を発症する場合があります。 ケジラミの体長は2mm程度で、よく観察すれば肉眼で確認することができますし、吸血した血液が最終的に便となって排出されるために、下着に茶色い粉末のようなものが付くようになります。 ■■疥癬 性行為や寝具、便座などを介して接触感染する疥癬は、高齢者施設や家庭内で感染することが多いといわれています。 疥癬とは、疥癬虫(ヒゼンダニ)が皮膚の角質層に寄生することで発症する感染症であり、およそ0.4mm程度の大きさで、約1か月の潜伏期間を経て、かゆみと赤い発疹が現れるようになりますし、特に皮膚のかゆみは夜間に強くなるのが特徴です。 ■■カンジダ症 放置してはいけない陰部の痒みの原因のひとつに、カンジダ症も忘れてはいけません。 皮膚や口の中、消化器などに常在するカンジダ菌が、免疫力の低下などによって異常に増殖することで発症する感染症がカンジダ症であり、発症すると、女性の場合は外陰や腟、陰毛部分のかゆみ、おりものの増加などの症状が認められます。 男性の場合には、症状が現れることは少ないですが、陰部のかゆみの他に、亀頭部などに白いカスを認めたり、湿疹が現れたりする場合もありますので注意を要します。 ■■性器ヘルペス 性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスが性器に感染して起こる病気です。 性行為などを介して感染し、いったん感染しても無症状のことが多いですが、痛みや陰部のかゆみを伴う水疱やびらんが現れる場合があります。 これら以外にも、放置してはいけない陰部の痒みを引き起こす性病や性感染症として、腟トリコモナスや性器クラミジアが知られています。 ■皮膚科に行くべきか婦人科に行くべきか泌尿器科・性病科に行くべきか 陰部の痒み、発熱やおりものの異常などの症状が伴う場合には、早めの医療機関への受診が推奨されます。 その発症原因として性感染症も決して少なくないことから、パートナーに自覚症状がなくても一緒に病院に行って、精密検査を受けることを検討しましょう。 代表的な受診先としては皮膚科が適しています。 あるいは、性感染症が疑われる場合は、泌尿器科や婦人科、性病科でもよいでしょう。 陰部のかゆみが現れ始めた時期や状況、かゆみの程度、他の症状があるかどうか、直近の性行為の有無などについて、できる限り詳しく医師に伝えて適切に診断してもらいましょう。 今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。 文/甲斐沼孟(医師)
甲斐沼 孟