「骨粗しょう症」は遺伝する? 骨密度の遺伝的要素や治療法・予防法を医師が解説
骨がもろくなる骨粗しょう症(骨粗鬆症)の症状や治療法 薬や注射で改善できる?
編集部: 骨がもろくなると、どんなリスクがあるのでしょうか? 小林先生: やはり、骨折しやすくなりますね。初期の骨粗しょう症は、痛みなどの症状もほとんどありません。しかし進行するにつれて、ちょっとした転倒や重いものを持つだけで手や足を骨折するようになってきます。さらには、これといったきっかけがなくても、自分の身体の重みで背骨が潰れて知らないうちに圧迫骨折になるということも起こり得ます。 編集部: ほかにも、骨粗しょう症の症状はありますか? 小林先生: 「症状」と言うべきか悩みますが、身長が早いペースで縮んでいく人が意外と多くいらっしゃいます。先述したとおり、骨粗しょう症になると、自分の重みで徐々に背骨がつぶれていくため、身長が縮んでしまうのです。さらに、その際「猫背」にもなっていくため、呼吸が浅くなったり、逆流性食道炎などを引き起こしたりする可能性もあります。 編集部: 骨粗しょう症に対して、どのような治療法がありますか? 小林先生: 骨粗しょう症の治療は大きくわけると、「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3つです。 編集部: では、まず薬物療法について教えてください。 小林先生: 骨粗しょう症に使われる薬は、骨の形成(新しく作られること)を促進する「骨形成促進剤」が最近の主流です。さらに、必要に応じて骨の吸収スピードを抑える「骨吸収抑制剤」や、骨の栄養素である各種ビタミン(D、K)剤、カルシウム製剤などが処方されます。それぞれ有効性や副作用などが異なりますので、患者さんごとの年齢や症状の進み具合などを総合的に考えて、医師が判断・処方します。
骨粗しょう症(骨粗鬆症)にならないための予防法 骨密度の低下を防ぐ方法は食事と運動?
編集部: 骨粗しょう症にならないための予防法はありますか? 小林先生: 3つの治療法のうち、食事療法と運動療法は、治療だけでなく予防としても有用です。骨粗しょう症を予防したければ、「食事」と「運動」に意識を向けてみてください。 編集部: 具体的にどのような点に気をつけたらいいのでしょうか? 小林先生: 「骨に良い栄養素」としてカルシウムが挙げられますが、10歳くらいまでに体内に溜め込まれて、それ以降は溜まらないとも言われています。あまりカルシウムに対して神経質になる必要はなく、規則正しい食生活を心がけ、カフェインやアルコールなどの嗜好品はできるだけ控えることが大事です。 編集部: では、運動については? 小林先生: 骨は適度に使うことで丈夫になり、使わないと弱くなっていきます。さらに、筋肉をつけると、体をしっかり支えられるようになり、転倒予防にもつながります。激しい運動を無理におこなう必要はなく、ウォーキングやラジオ体操などの中程度の運動で十分効果的です。生活の中に、ちょっとしたウォーキングやストレッチなどを、意識して取り入れてみてください。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 小林先生: 骨粗しょう症の根治治療はないため、予防が重要になってきます。まずは採血や骨密度検査など、骨粗しょう症のチェックを定期的に受けるように心がけましょう。基本的に完治はなく、1回治療をはじめたら継続的に通う必要がありますので、信頼できて長く付き合えるクリニックを探しましょう。骨粗しょう症と言っても、薬の処方などは患者さんの持病や状態によって異なるため、やはり、骨粗しょう症の専門知識を持っている医師に相談するのをおすすめします。クリニックのホームページなどで、実際の症例や実績が確認できることも多いので、クリニック選びの参考にしてください。