三菱新型「トライトン」を日常で使ってみたら…ピックアップトラックに抱いていたイメージがすべて覆されました。「サラッと転がしてたら、カッコいいかも」
北米でも十分に戦えるルックス
いや、このクルマなら北米に持っていっても絶対に通用するだろうになぁ……と今の僕が強く感じているのは、後で述べるパフォーマンスや乗り味ももちろんなのだけど、まずはそのルックスだ。日本に導入されているのは4ドア+2列シートのダブルキャブのみだが、車格は横幅こそ1930mmとわずかにスレンダーなものの、全長5360mm、荷台の奥行き1525mmというサイズは、ライバルとなるだろうフォード「F150」やジープ「グラディエーター」、トヨタ「ハイラックス」にさほど引けを取らない堂々としたもの。それにも増して、3眼のプロジェクターランプとL字型に配されたLEDのデイタイムランプと骨太なグリルで構成される顔つき、逞しいオーバーフェンダー、ゴツいバンパーなどからなるスタイリングは相当な迫力を醸し出していて、好き者の目には間違いなく魅力的に映るはず。ピックアップトラックは雄々しいのが正義、パッと見からしてタフじゃなけりゃダメだ、といわんばかりのルックスだ。 今回の撮影は御覧のとおり日が暮れてからの都心をメインに行ったわけだが、帰宅途中の若いサラリーマンと思しき人が何人か足を停め、「これ、何ていうクルマですか?」「写真撮ってもいいですか?」「カッコイイですね」なんて声をかけてきた。逆に質問してみたところによれば、彼らはクルマが熱狂的に好きっていうタイプでもクルマに詳しいわけでもないらしく、「ひと目見て本当にカッコイイと感じたから」「乗るならこういうクルマがいいなと思ったから」と足を停めた理由を話してくれた。好き者以外をも自然に惹きつけてしまうあたり、まるでスーパーカー並みの存在感だ。 けれど、僕を最も惹きつけたのは、そこもあるけどそこだけじゃなかった。走り出してみて、かなりビックリの連続だったのだ。
乗用SUVのような乗り心地
Aピラーの内側にある大きなグリップとドア下にある幅の広いステップのおかげでやすやすとドライバーズシートに乗り込むと、目の前に広がっているのはオフローダーらしい水平基調の世界。ラフな道を走行しているときにクルマの傾き具合などを直感的に理解できるようデザインされているわけだ。操作系はすべてドライバーの手が届きやすいところに機能的にレイアウトされていて、どこをどうすれば何がどうなるのか、は一目瞭然。初めて乗り込んでもすぐに馴染めるコクピットだ。 と、そこまでは予想していたとおり。あれ? と思ったのは、望外にシートが心地よかったからだ。サイズが大きめでクッションもたっぷりしてて、座り心地がいい。ドライビングポジションも乗用車的でまったく違和感がない。視界もすっきりと通っていて、クルマの四隅もつかみやすい。冗談でも小さいとはいえないボディサイズだが、視界のよさに助けられて物怖じせずに走り出せる人も少なからずいることだろう。 あれれ? と思ったのは、乗り心地がちょっとした乗用SUVのようだったからだ。これ、モノコックだったっけ? なんて頭の中で再確認しちゃったほどだった。もちろんラダーフレームも前後のサスペンションも新開発なわけだが、サスペンションの取り付け部の剛性を高めて脚がしっかり機能できるようにしたり、リアのリーフスプリングの枚数を減らしつつフリクションロスを徹底的に排除したりと、タフな性能と乗り心地の両立を図る工夫があちこちになされてるようだ。他国ではこうしたダブルキャブのピックアップトラックをファミリーカー代わりに使う人も相当数いるようだから、そうした人たちには大歓迎されることだろう。とにかく、ピックアップトラックとしてはちょっと驚くぐらいの快適さなのだ。 足腰がそうした性質を持ってるからか、オンロードにおけるロードホールディングもしなやかにして確実、カーブが続く場所でのハンドリングも、予想を遙かに超えてよかった。1.99というホイールベース/トレッド比の数値を見たら間違いなく直進安定重視のクルマなのに、実に素直によく曲がる。ステアリングを切ったら切った分だけ車体がしっかり向きを変えてくれるし、車体の大きさや背の高さ、それに重さを意識させられることもなかった。楽しいか? ピックアップトラックであることを考えたら、望外に楽しい。