ある日突然、彼氏が女装を始めた...交際中の私が周りに言われた“好き勝手な本音”
ドイツで知り合ったエリートエンジニアの彼氏が、ある日突然、「女装」をはじめた...! 美容道にまい進し、どんどん綺麗になっていく彼氏に、パートナーはどう対峙していったのか。石野リサさんがご自身の経験を語ります。 ※本稿は、石野リサ著『彼氏が女装をはじめました...』(インプレス)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
ある日突然、彼氏が女装を始めた件
「ねえ、今日から新しいトリートメントに変えたの。香りもよくてね…。寝る時オイル塗ってシルクキャップすると、しっとりするの」 「へー、そうなんだ。サラサラしてきれいね、髪」 これはおしゃれな女子友との会話ではない。大恋愛からお付き合いして10年になる彼だ。 それは2022年1月2日に始まった。私たちはいわゆるアラフォーの普通のカップルである。彼、「うさぎ君」は年末から連絡が取りづらかった。 もともと何かに気が向くと他の関心は極めて薄まる人なので、それほど気にならなかったが、どこかに違和感があった。なんだろう。 とりあえず新年会でもしようか、とチャットを送る。 即レスで「良いね!」「で、男子がいい? 女子がいい? 中性がいい?」 ...??? 「じゃ、中性...」??? まあいい、後でわかるだろう。
ぴんぽーん。時間になり、彼は来た。特に変わりなし。ふと靴を脱ぐ足元を見た。えっ? ロングスカートとブーツ? 上は普通のおっさんである。 「...なんかあった?」 「別に」 「なんでスカートなの?」 「穿いてみたかったから」 よくわからない。確信に満ちた笑みで彼は言った。 「今にボクが日本の男の標準になるんだよ」 これが新型ハイブリッド男子となった彼と私の恋人ライフ、第二のスタートだった。
勢いを増す「彼の美容道」
数日後、近所のお店で呑むことになった。うさぎ君はすでに席に着いていた。が振り向いた顔がヤバい。真っ白ファンデにどピンクのチークでオカメインコ化している。 そして、はいているのはレザーのタイトスカート。気合が入っていることはわかるが、一風変わったファッションの若者たちが集まってくる下北沢でもかなり個性的なほう、というより完全に浮いている。 「どうせだったらメイクもって、ボクのサポーターさん達にすすめられて、やってみた♪」 後でわかったけれどサポーターとは彼が仲良くしている劇団女子のことらしい。熱燗をチビチビ飲み、エイヒレをがっつく姿はおっさんそのものなのだが...。 絵としておかしい。ふと心配になる。 「...捕まらないようにね」私は言った。 「捕まりません!」 以後、彼の美容道は勢いを増していく。メイク技術もサロンやらお店やらインスタやらで研究しまくり。女装はかなり楽しいらしく、サポーターの皆さんも熱血指導してくれている模様。一時の気の迷いで余計なことしないでよっ! 私はその度プリプリしていた。 「ボク、エンジニアなんで研究熱心なんです!」 うさぎ君は前職の、開発エンジニアの血が騒ぐらしい。もともと思いついたら止まらない性格なのだ。ついにアドバイスをもらうため女装専門フォトスタジオまで訪問してしまった。仕上がったメイド姿の写真を満足げに見つめるうさぎ君。 「メイクのまま帰る人はいないから驚かれた~。くすっ(笑)」 そりゃそうだろう。女装フォトスタジオは普段はごく普通の紳士が非日常を体験するコンセプトのようだ。髭を隠すファンデ、脚の毛を隠す厚手タイツなど独特のノウハウがあるらしい。 「色々なメイクのノウハウも聞いてきた♡」 メイク熱に更に磨きがかかっている。この変化に私はまだ追いついていない。いや、追いつけない。 春になる頃には驚くほどの進歩でおっさん美女が出来上がっていた。そのへんの女の子より女子力高いかもと、ドヤるうさぎ君。年齢&お肌の劣化にイジイジしがちな私からすると、この自己肯定感は羨ましい。 彼はどこでも自信満々でこのファッションで出かけていく。そして大抵の人はポジティブな反応なんだそうだ。 「キレイ」と言われ続けると本当にキレイになるみたいで、私はうさぎ君の変貌に舌を巻いた。