【マイルCS】史上初の「当日乗り替わりで中央GⅠ制覇」したナミュール 秋のマイル王決定戦を「記録」で振り返る
人気薄でマイルCSを制した、個性豊かな名馬たち
グランアレグリアが単勝1.7倍で勝利したように、当レースは1番人気の馬が期間内で14勝。5番人気以内は31勝で、6番人気以下は7勝と圧倒的に5番人気以内の馬が強い。 一方、単勝オッズが高かった勝ち馬をランキングにすると、3位が2002年トウカイポイントの23.8倍、2位が10年エーシンフォワードの52.4倍、1位が00年アグネスデジタルの55.7倍。高配当決着も稀にみられる。 3位のトウカイポイントは、01年夏にセン馬となってから才能を発揮するようになった名馬である。02年は年明けの中山金杯から始まり、白富士S、中山記念、メトロポリタンS、宝塚記念と、上半期で5戦を走り切り、中山記念では8番人気1着と穴を開けた。 夏には札幌記念で10番人気2着、秋初戦の富士Sで6番人気5着と実力を示してはいたが、マイルでの勝利は条件戦での1勝だけで、GⅠ実績も宝塚記念10着しかなかったため当日は11番人気と低評価だった。 レースは速いペースで流れ、トウカイポイントは馬群のなか、中団辺りにつけていた。3~4角で仕掛けはじめ、直線で進路を確保すると馬場の真ん中から見事な末脚を見せて、エイシンプレストンらの追撃をしのいで勝利した。トウカイポイントの父はトウカイテイオーであり、同年の最優秀父内国産馬に選出されていることも含めて、種牡馬になれなかったのが惜しい一頭だ。 最も単勝オッズが高かった00年勝ち馬のアグネスデジタルは芝ダートの二刀流でも有名。前年に全日本3歳優駿で勝利し、年明けにダートのヒヤシンスSで3着好走と、もともとはダートが中心だった。 ヒヤシンスSの次走からは芝で3戦続けて連敗したが、夏は再びダートに矛先を変えると、交流重賞の名古屋優駿で勝利、続くジャパンダートダービーは14着。秋の始動戦、9月のユニコーンSを勝つと、翌月の武蔵野S2着とダートで活躍をみせた。2000年はここまでで8戦。過密ローテのなか、次走に選ばれたのが芝のマイルCSだった。 武蔵野Sが10月28日でマイルCSは11月19日。中2週という中々の強行日程。ローテはもちろん、勝ち鞍がダートしかないこともあり単勝オッズは55.7倍だった。レース道中は18頭中15番手付近と後方からになり、直線まで我慢する競馬に。直線半ばでも最後方で脚をためていたが、ラスト200m辺りから急加速し、最後は1番人気ダイタクリーヴァを半馬身差で差し切ってゴールした。 翌年以降も、アグネスデジタルはファンを驚かせるローテーションと走りを見せ続ける。マイルチャンピオンシップ南部杯、天皇賞(秋)、香港C、フェブラリーSと、マイルから中距離で芝ダート問わずGⅠを4連勝したことは、記憶にも記録にも刻まれる勝利だったと言える。 今年は海外からチャリンが参戦する。牝馬のブレイディヴェーグや昨年の優勝馬ナミュールらが迎え撃つ構図だが、果たしてどんな結末が待っているのか。 ライタープロフィール 緒方きしん 競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
緒方きしん