試合中に頭部外傷で緊急搬送…選手生命の危機から復活を遂げたフットサル選手・宮川泰生が “あの日”から146日目の復帰戦へ|Fリーグ
宮川泰生はその日、ピッチで選手生命が失われかけた。 7月9日の第7節、名古屋オーシャンズがホームにシュライカー大阪を迎えた一戦でそれは起きた。33分、1-2でビハインドの名古屋がパワープレーを仕掛けていたシーンだ。 左サイドの宮川が清水和也へ送った縦パスがズレてタッチラインを割ってしまう。すぐに切り替えた大阪が前線にロングボールを送るなか、宮川は全速力で自陣に戻る。次の瞬間──。 落下地点へ走り込みながら飛び跳ねた宮川の頭部と、同じくジャンプしてボールを受けようとした大阪・清水寛治の頭部が激突。2人はピッチに倒れ込んだが、特に宮川は、落下する際に受け身を取ることができないまま、さらに頭部を床に打ちつけてしまったのだ。 身動きを取らない宮川の様子に、場内は騒然とした雰囲気になる。「早く!」「救急車!」どこからともなく、そんな声が響く。すぐさま担架が駆けつけ、チームメートに静かに体を持ち上げられてそこへ横たわると、宮川は場外へ。試合は中断を余儀なくされた。 「選手の治療中のため試合を中断しております」とアナウンスが流れ、選手はひとまずロッカーへと引き上げた。その後、名古屋が公式SNSに「宮川選手は意識を取り戻しました」と投稿。約40分中断していた試合は、宮川の無事が確認されたことで再開した。 名古屋はその試合で今シーズン初黒星を喫したが、勝利した大阪にも笑顔はない。結果以上に後味の悪いゲームとなってしまった。ただし、宮川自身の苦労はそこから始まった。 頭部への受傷は、一大事である。打ちどころが悪ければ日常生活に支障をきたすことも、選手生命を絶たれてしまうことさえある。サッカーでも、脳振盪は深刻な損傷として重大視されるため、復帰に向けた脳震盪プログラムが組まれている。おおむね1カ月程度で復帰へ向かうことが多いが、宮川が医師より伝えられたのは「頭部外傷」だった。いわゆる脳震盪とは異なり、サッカーにおける事例が少ないケースだったためラグビーの脳損傷からの競技復帰へのアプローチを参考に、再びピッチに立てるよう、段階的なプログラムを進めることになった。 宮川はことあるごとにSNSで自身の経過を報告し、ファン・サポーターに元気な姿を見せてきた。一方で、本当にピッチに戻ってこられるのか、見守る者にとっては、半信半疑だった。それほどに“あのシーン”は衝撃的で、最悪のケースが頭をよぎってしまうほどの出来事だった。 あれから4カ月半、かねてより取材オファーをしていた編集部に、クラブから連絡が届いた。「宮川が次の試合に復帰できるかもしれません。取材、お待たせしました」と。 本人にはあらかじめ、当時の詳細や受傷前後の出来事を聞くことへの了解が取れた。幸い、心的外傷後ストレス障害などは起きておらず、以前と変わらない、宮川の姿を確認できた。 あの日から146日、復帰を目指す12月2日の第21節すみだ戦を前に、宮川に話を聞いた。 インタビュー・文=本田好伸、大西浩太郎 ※インタビューは11月22日に実施しました
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