オリンピック直前のパリ。白鳥が舞い、ユーゴ・マルシャンが聖火を掲げた。
パリとバレエとオペラ座と
ルイ14世時代に始まり、エレガントでノーブルなスタイルを築いてきたパリ・オペラ座バレエ団。そんなオペラ座をとりまく、パリのバレエの「いま」を、元パリ支局長・大村真理子が多彩な視点でリポートします。
マルセイユを出発した聖火が7月14日パリに到着し、市内中心部を周りパリ市庁舎までリレーが行われた。100年ぶりのオリンピック開催と革命記念日というフランス共和国にとって記念すべき日の二重のお祝いに、パリ中が夜までお祭り気分に。恒例のエッフェル塔の花火も実に華やかなうえ、夜空にはオリンピックにまつわる多数のモチーフ、共和国のシンボルであるマリアンヌ、パリ市の紋章にラテン語で書かれている「fluctuat nec mergitur(たゆたえども沈まず)」の標語が描き出された。スクリーンもない空中にどうやってプロジェクション?と驚かせる素晴らしい技は1000台のドローンの仕事だという。テクノロジーの進化が観衆に大きな喜びをもたらした10分間だった。 これに先立つ日中、235年前の1789年7月14日にフランス革命の発端となった監獄襲撃事件が起きたバスティーユ広場では16時30分から素晴らしい催しが見られた。広場に50本近いバーが並べられ、パリ・オペラ座のプルミエ・ダンスールを含む約20名のダンサーたちと公募による一般参加者たちが集ってオープンエアの大型クラスレッスンが行われたのだ。パリ・オペラ座のシーズン2023/24を19時30分からの公演『白鳥の湖』が締めくくるこの日、クラスレッスンの後、広場に面した劇場から道路を渡って白いチュチュを着けた33羽の白鳥たちが! 集まった観衆たちを前に素晴らしい群舞を披露した。ハイライトは、聖火を掲げて堂々と登場したユーゴ・マルシャンだ。広場にそびえる7月革命記念の塔と白鳥たちを背景に、彼は続いて姿を現したドロテ・ジルベールに聖火を託した後、彼女の腰に平手を当て軽々と片手で支えて空高く彼女をポルテした。これは『オネーギン』などで見られる"フランボー(トーチ)"と呼ばれるテクニックである。これ以上ない聖火にふさわしいポーズだろう。このふたりの写真は早速、世界中のメディアで紹介されることになった。