亀梨和也主演「ゲームの名は誘拐」ドラマには小説の続きがあった 逆転に次ぐ逆転で物語の印象ががらりと変わる 20年以上前が舞台でも時代設定に違和感なし
推しが演じるあの役は、原作ではどんなふうに描かれてる? ドラマや映画の原作小説を紹介するこのコラム、今回はキレッキレの亀ちゃんが堪能できるこのドラマだ! 【写真を見る】『ゲームの名は誘拐』は2003年に「g@me」として映画化 主演の「藤木直人」「仲間由紀恵」を見る
■亀梨和也・主演! 「ゲームの名は誘拐」(WOWOW・2024)
ほぼ改変なしで原作通りに話が進み、そしていよいよ最終回、おおまさに原作と同じラストシーン……え? あれ? 待って、まだ30分近く時間残ってるんですけど? そこからの驚きをどう表せばいいのか。一言で言えばドラマには「小説の続き」があったのだ。 前々回の「かくしごと」(原作は北國浩二『嘘』)は原作のクライマックスで映画が終わっていて、あのあと登場人物たちがどうなったかは原作で読んでね、というふうに紹介した。つまり原作小説に映画の「続き」がある、という形。今回は逆だ。ドラマが原作小説の「続き」を作っているのである。わあ、こう来たか。 原作は東野圭吾の同名小説『ゲームの名は誘拐』(光文社文庫)。広告代理店の敏腕プランナー・佐久間駿介は日星自動車のプロモーションイベントを担当していた。ところが日星自動車の葛城副社長の鶴の一声で、そのプロジェクトが白紙に戻される。憤懣やるかたない佐久間は葛城の自宅へ向かったが、そこで邸宅の塀を乗り越えて出てきた葛城の娘と出会う。 樹理と名乗ったその娘は葛城の愛人の子で、家族の中で辛い状況にあるという。家には帰らない、父から金を巻き上げたいと彼女がこぼすのを聞き、葛城に一矢報いたいと思っていた佐久間は狂言誘拐を思いつく。樹理と協力しながら3億円を奪うべく計画を練るが……。 というのが原作とドラマの両方に共通するあらすじだ。最大の読みどころはなんといっても佐久間の誘拐計画。人質の協力があるとはいえ、警察の介入を前提として万全な対策を練る。こちらの手がかりを一切与えることなく葛城とどうコンタクトをとるのか。犯人にとって最も危険な金の受け渡しはどうするのか。この通りにやれば誰でも誘拐犯になれるのでは(無理です)。 しかもこの小説、徹頭徹尾佐久間の視点のみで綴られているのがポイント。佐久間の見えてないところで誰が何をやっているのかはいっさい描かれない。葛城が警察には届けてないと言ってもそれが本当かどうかを知るすべはなく、もしかしたらとっくに警察の監視がついてるかもしれないし、そうじゃないかもしれない。神の視点で俯瞰することができないので、読者も佐久間とともに手探りで進むしかないのだ。そこが面白い。