阪神・淡路大震災の教訓は能登半島地震に生かされたか? 石川県の被災地で活動した大学病院救急医に聞く
(山本) 確かに大石さんが言われたように、そういった改善が30年前よりはあるという一方、今回「チャント!」でも報道していただいていますけれど、道路が悪かったということで対応が少し後手に回ってるところがあるんですね。 ですので例えば、民間のヘリコプターが先に食料の配達ができているけれども、なかなか公のものが届かないとかですね、それから段ボールベッドみたいなものも今はあるんですが、それの搬入も1週間ぐらい遅れているというようなことがあります。 新しい災害、過疎地・山間部での災害に対して、まだ弱いところがあるなということを今回感じました。 (夏目) 避難所で言いますと、災害関連死を防ぐという意識も当時と今では、だいぶ変わったのかなと思うんですがいかがでしょうか? (山本) そうですね、一つ大きな違いは阪神・淡路大震災の頃に比べると、かなり日本の高齢化が進んでいるわけですね。ですから避難所でも弱い方が増えているんです。私が行った福祉施設も放っておけば1週間で次々と人が死んでしまうのではないかというような状況だったんですね。そういう意味では、超高齢化社会における災害というものに、我々がどう立ち向かっていくのかという新しい課題、これが今突きつけられていると思います (夏目) 避難所では感染症対策も課題となっています。そのあたりはどうでしたか。 (山本) これは残念ながら新型コロナやインフルエンザというのは流行ってしまっていて、あっという間にやはり広がっていくんですね。 今は少しずつ前よりは良くなってきていますが、これも水がないという状況だと手洗いが十分にできなかったりして、ノロウイルスなども極めて流行っている状況です。 ですので、改善はされているんですけれど、まだ見直さなければいけないところが色々とあるのではないかなと思います。 ■124時間ぶりの「奇跡の救出劇」で生かされた教訓 (夏目) 大石さん、避難所以外で教訓というのは生かされているんでしょうか? (大石) そうですね、やはり耐震化だと思うんですね。あれから29年で進んだのかどうかなんですが、阪神・淡路大震災の死因は「建物の倒壊などによる窒息・圧死」が全体の8割近くあったんです。では能登半島地震はどうかということですが、死因が公表されている42人のうち38人は家屋倒壊によって亡くなっている。これは9割近い数字です。 ちなみに、石川県珠洲市の耐震化率は51%(2018年度)、やはり耐震化がいかに大事かというのを物語っている数値かと思います。 (夏目) 山本さん、建物の倒壊だと命を救うのも難しくなってくるということですね。
(山本) 珠洲市や輪島市の方は木造住宅が多くて、非常に激しく潰れているところがあります。そういった所ではなかなか救命が難しかった。 ただ一方で、我々が行った珠洲市でも124時間ぶりに90代の女性が瓦礫の下から運び出されて助かったという事例がありました。 この時は我々医師団も、いわゆる「クラッシュ症候群」筋肉が溶け出して心停止に陥るということを知っていましたので、瓦礫の下にいる時点から点滴を大量に行って腎不全にならないようにしていたと。 そういったところでは少し改善は見られたということだと思います。 (CBCテレビ「チャント!」 1月17日放送)
CBCテレビ
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