J1昇格不可の町田が残留争いの行方を握る不可思議
最下位の長崎が連勝、17位のガンバ大阪が3連勝と調子を上げてきただけに、自動降格の枠がひとつ減れば状況は一気に変わる。実際、残留争いに巻き込まれているチームの関係者は「そりゃあ町田さんを応援するよ」と、苦笑いしながら偽らざる本音を明かしたこともある。 シーズンの佳境でJ1昇格への夢が断たれても、町田のモチベーションが萎える事態は生まれにくいと言っていい。おそらく来シーズンのライセンスをJリーグ側へ申請した段階で、あるいはシーズン開幕の前後から、J1基準を満たしていない状況をクラブに関わる全員が共有していたからだ。 JFL時代に1年間だけ指揮を執った2010シーズンを含めて、通算で6シーズン目になる元日本代表DFの相馬直樹監督(47)のもとで育まれた、揺るぎない土台が今シーズンの町田を支えている。全体をコンパクトに保ちながら、手数をかけない攻撃やセットプレーからゴールを狙う。 派手さはないものの総得点52はリーグ4位タイで、総失点36は7番目に少ない。攻守両面で奏でられる良好なハーモニー。そして、かつては少年サッカーの町と呼ばれ、潜在的な可能性を秘める町田市を巻き込んでいくためにも、J2戦線に大きな爪痕を残したいという意欲は高い。 J2の上位戦線も大混戦で、首位の松本山雅から勝ち点7ポイント差に7チームがひしめき合う。台風の関係で消化試合数がひとつ少ない町田は残り9試合。そのなかには1ポイント差で迫る大分トリニータ、4ポイント差のアビスパ福岡、東京ヴェルディとの直接対決も含まれている。 J1に昇格できないチームが2位以内に食い込めば史上初、3位から6位の間に入れば5位でフィニッシュした2014シーズンのギラヴァンツ北九州以来、2チーム目となる。歴史を変えて、その上で未来の夢をより鮮明にするために。J1クラブも注目する町田の挑戦が、ラストスパートに入る。 (文責・藤江直人/スポーツライター)