『メタファー:リファンタジオ』分かりやすさは扇動と紙一重―大衆の心を動かす選挙演説のレトリック【ゲームで英語漬け#147】
『メタファー:リファンタジオ』の舞台であるユークロニア連合王国では、暗殺された王が仕掛ける魔法によって「次代の王を選ぶ民の信託」が行われます。主人公も候補者として名乗りを上げ、王国全土を巡る支持者集めの旅に出るのですが、その道中では候補者同士の駆け引きや妨害、時には武力行使に遭遇します。国民の信任を集めるので一応選挙らしい体裁にはなっていますが、決闘で殺すのは有りらしいという実質的にバトルロイヤルの様相を呈しているようです。 【画像全7枚】
一方我々の現実の方ではいよいよ明後日11月5日、第47代アメリカ大統領を決める選挙が行われます。ただし、11月第1火曜日の選挙は形式的には大統領を直接選ぶので無く、人口比に応じた州の代表者となる「選挙人」を決めるもので、12月の選挙人による投票、年明けの開票によってはじめて大統領が選出されるのです。ただし選挙人が予定と違う候補に入れることも州によっては可能であり、大勢には影響しなかったもののそうした「裏切り」があり得ることは確かです。
二度に及んだトランプ氏に対する暗殺未遂もあって、その行方に大きく注目が集まるところですが、米大統領選において欠かせないのが全国民に呼びかける演説です。出馬表明から就任時まで、彼らの公的なスピーチは一言一句逃さず全て記録され、どのような意図があるかを精査された上で米国政治史の1ページに編み込まれます。特に、勝利宣言や就任演説ではアメリカの時代を象徴するフレーズがいくつも生まれていて、現代の世界情勢を知る上で一度はしっかり見ておくべきものでもあります。
演説において特に注目されるのが聴衆に賛同させるためのレトリックです。話す内容とは別の、言葉のリズムやたとえ話を駆使して共感を引き出すテクニックですが、報道各社は各候補者のスピーチをレトリックからも解析し、どちらがよりよく訴えているかをチェックします。どういう論法を使っているか、特に訴えたいことは何か、ただ聞こえの良い言葉でしか無いのか、新聞などが演説を報じるときは政策だけで無くこうした部分に注釈を付けて、陣営がどんな戦略で挑んでいるかを分析しているのです。『メタファー』の物語の中でも演説する場面があるため、英語版ではそうした要素を翻訳に取り入れています。