「この人の葬儀、どうしたらいいのか…」天涯孤独の人の「葬儀費用の問題」、曖昧なまま放置されているワケ【司法書士が解説】
万一自分が亡くなっても、家族がいれば葬儀を執り行ってもらうことができます。しかし、天涯孤独だったらどうでしょうか。事前準備ができる場合は別ですが、多くのケースでは、「どこかのだれか」に葬儀と火葬の手続きを取ってもらい、その費用を払ってもらうことになります。多数の相続問題の解決の実績を持つ司法書士の近藤崇氏が、身寄りのない人の葬儀における「法的な空白」について解説します。 年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
専門家も直面する「葬儀費用は誰が払うのか」問題
「身寄りない方の場合、亡くなられたあとの葬儀費用はだれが負担するのか?」 この問題について、法律上は明確な回答が存在しないというのが現状です。 実際、横浜市で相続業務を行っている司法書士の筆者も、この「葬儀費用は誰が払うのか問題」に直面することは少なくありません。 葬儀は「冠婚葬祭」の言葉通り、一種のセレモニーです。 たとえば結婚式の場合、費用はだれが負担するのでしょう? 結婚式なら当然、結婚する当事者(夫婦)が負担することになるでしょう。だたし、費用の一部は「ご祝儀」で賄い、不足分を当事者が負担するというのが一般的ではないでしょうか。 これを葬儀に置き換えて考えてみましょう。結婚式の夫婦に当たる主催者は、葬儀でいえば「喪主」、ご祝儀は「香典」に置き換えられます。この原則でいえば、身寄りがない方が亡くなった場合、その葬儀費用を負担するのは「喪主=相続人」だといえるでしょう。 高等裁判所の判決でも、同様の見解を示しています。 平成24年3月29日判決 名古屋高等裁判所 葬儀費用の負担者は葬儀の主宰者であるとする見解もあるが,この見解によっても,死者が生前に自己の葬儀に関する債務を負担していた等の特別の事情がある場合には,相続人が葬儀費用を負担すべきであるとされている。 ただし、この判例でも、故人(被相続人)が従前に葬儀費用についての取り決めをしていた場合など、特段の事情があった場合について、検討の余地を残しています。