東京・葛飾「平沢王国」に異変 異例の“代議士3人時代”突入へ【衆院選2024】
「おめえら、早く並べよ!」 べらんめえ口調の怒号が会場に響いた。区議団の幹部が、もたついている若手の区議に向かってマイクを使って言い放った。時代に逆行するような怒号にドキッとしたが、会場に集まった支援者らは気にしていないようだった。この日集まった支援者は町内会の会長など古くから平沢氏を支えている高齢者が多かった。 あいさつで自民党都議が「今回の党本部の決定は釈然としない」と話すと、多くの支援者がうなずいていた。ここでは党本部の決定に異を唱えても平沢氏のためなら“正義”となるかのようだった。 平沢氏はこう息巻いた。「私は総裁選で石破さんを応援した。言いたいことはあるけれど、今は言わない方が良い」。自民党総裁選で平沢は石破氏を支えたにも関わらず、非情にも公認されなかったことに不満を隠さない。 そして平沢氏は、自身と同じ警察官僚出身の佐々淳行氏が石原慎太郎氏に贈った台詞「反省しろよ慎太郎 だけどやっぱり慎太郎」を引用した。 「『反省しろよ自民党、平沢!だけどやっぱり自民党、平沢』なんですよ!」 支援者からこの日一番の拍手が沸いた。 平沢氏の強さの秘密は徹底的な「どぶ板」と言って良い。 私が小学生の時のことだった。100歳を目前に大往生した曾祖父の通夜に突然、平沢氏がやってきたのだ。曾祖父は政治とは無関係だったので、親族一同驚いていたのを覚えている。 「ひーじーちゃんのために偉い人が来てくれたんだよ!ヒラサワ先生っていうんだよ」。幼心に強烈な印象が残ったことを覚えている。 また最近、私が所属していた地元小学校のサッカークラブが創立30周年を迎え、ささやかな祝賀会が開かれた。そこにも「ヒラサワ先生」がやってきたのだ。しかも、自民党区議・都議を引き連れての大所帯だった。クラブ関係者は「だれも平沢氏を呼んでいない」ということだったが、区の施設を使用した催しだったため、平沢氏に情報が入ったのだろう。「義理と人情」がどこよりも濃く残る下町では、こうした活動が絶大な効果を発揮しているのかもしれない。