東京・葛飾「平沢王国」に異変 異例の“代議士3人時代”突入へ【衆院選2024】
東京・葛飾区立石。千円あれば酔っぱらえる「せんべろ」の街として知る人も多い。下町情緒を醸し出す仲見世商店街は、昼から頬を赤くした酔客の姿も珍しくない。 【写真を見る】東京・葛飾「平沢王国」に異変 異例の“代議士3人時代”突入へ【衆院選2024】 衆院選が公示された今月15日、立石の一角にある神社には朝から多くの人が集まり、平沢勝栄氏(79)の「出陣式」が執り行われた。 葛飾区(東京17区)では小選挙区制が敷かれた1996年の衆院選以降、平沢氏が議席を守り続けている「平沢王国」だ。民主党(当時)が政権を奪取した2009年の衆院選でも、平沢氏は圧倒的な強さで民主党の対抗馬を破った。 しかし今回、“裏金問題”に端を発し、平沢氏は自民党の公認無しで戦うことになり、陣営は危機感を募らせていた。 「初めて供託金を払いに行きましたよ。今までは党がやってくれたので…」 陣営の関係者が「異例の選挙戦」であることを吐露した。 葛飾に生まれ育った私はこれまで地元である東京17区の情勢取材を担当してきた。今回、初めて自民党の非公認となり無所属で出馬した平沢氏の選挙戦を取材した。 記者「平沢さん、意気込みは?」 平沢氏「…」 記者「きょうを迎えて、お気持ちは?」 平沢氏「…」 異様な光景だった。 公示日に平沢氏は記者から向けられた質問に何も答えず、ダンマリを決め込んでいた。普段は無風の選挙区のため、こんなに報道陣がいるのは見たことがないが、今回は公示前から「裏金・非公認」の選挙区として取材が加熱していた。平沢氏は「渦中の議員」として注目されることを快く思っていないように見えた。 しかし、今の心境を聞きたい。こう思った私はひらめいた! 筆者「平沢さん、僕、立石出身なんですよ」 平沢氏「え?そうなの??」 この日、初めて喋った!さすが「ミスターどぶ板」といわれる平沢氏。地元出身者のお願いは断れなかったようだ。 筆者「どうですか、今回は?周りの声は?」 平沢氏「今回はただ勝つだけじゃダメなんだよ。大差で勝たないと!」 平沢氏は大差をつけて勝つことを強調した。こうした意向を汲んでか、平沢氏を支える地元の自民党区議・都議らもピリピリしているように見えた。 「修祓式(しゅうれんしき)」と呼ばれる出陣の行事は、まるで時代劇で見るような儀式だった。平沢夫妻の脇を葛飾区長と御年100歳の後援会長兼選対本部長が固め、さらに自民党区議団らが整列していた。