特集:2025世界経済総予測 2025年カレンダー 注目イベント トランプ復活 戦後80年 夏の参院選…=小玉祐一
2025年の世界経済のキーパーソンとなるのは、やはり132年ぶり2人目の大統領復活となるトランプ米次期大統領だ。財務長官には投資家のスコット・ベッセント氏を充てるなど第2次政権の主要経済閣僚の人選を終えており、1月20日の就任式に向けて準備を整えつつある。 しかし1期目のように、発言内容が頻繁に変わり、しかも次から次に新しい政策が追加される可能性があり、展開は読みにくい。 3月までに実施される一般教書演説と予算教書の提出を経て、政策の輪郭はある程度みえるだろうが、景気回復期待が高まるのか、インフレ再燃への不安が広がるのか市場の反応は予断を許さない。 欧州政局も流動的だ。フランスでは、内閣不信任案が62年ぶりに可決され、バルニエ首相が退陣した。仏与党連合の議席は下院の4割程度で、当面は不安定な政権運営が続くだろう。財政赤字が一段と拡大すれば、最悪の場合、欧州債務危機の再来を招きかねない。 ドイツでも、財政緊縮派の自由民主党が連立政権を離脱したことで政権運営が行き詰まっている。 ◇衆参同日選が浮上? 日本経済で最も注目されるのは、3月に集中回答日を迎える春闘だ。石破茂首相は所信表明演説で「賃上げと投資がけん引する成長型経済」を目標として掲げる。25年春闘で、連合は全体では「5%以上」、中小企業の労働組合は「6%以上」の賃上げを求める方針を決定している。石破首相も大幅な賃上げを実施するよう経済界に要請しており、賃上げの成否が政権運営に大きく影響する。 一方、国内政治では夏の参院選が最大の焦点となる。与党にとっては「政治とカネ」問題で失った世論の支持を取り戻せるか、野党にとっては野党勢力の結集ができるかどうかがポイントになる。 24年10月の衆院選に続き、再び野党勝利になれば石破政権は行き詰まり、状況次第では早期の衆院解散総選挙もあり得る。その前に石破首相が退陣する可能性や、「衆参同日選」に打って出る選択肢もあり、政局の不透明感が株価の重しとなる展開も考えられる。
(小玉祐一・明治安田総合研究所フェローチーフエコノミスト)