昭和なら許された、ちょっとスケベなおもしろおじさんになりたいーー「命の授業」に挑み続ける、ゴルゴ松本54歳
こうして得た知識が、体文字ギャグにしていた「漢字」にフィードバックされ、独自の解釈も加わって、ゴルゴのオリジナルコンテンツとして蓄えられていったのだ。 「例えば、『難』の字。苦難、困難、災難とか、難が無いことが“無難”じゃないですか。でも、これを難が有るにしたら“有り難う”なわけです。これを日本人は、1000年前から使い続けてるんですよ、有り難しって。コロナ禍になってからテレビで見たんですけど、実際に人間ってね、ずっと平和の中にいると、感謝しなくなるらしいんです。誰かに助けられたりしないと感謝の念が湧かない。なるほどね、だから『難』がないと『ありがとう』って言えないんだな。このありがとうという感謝の言葉をこの漢字に当て嵌めた日本人は、すごいんですよ」
漢字は記号。表の意味もあれば裏の意味もある。 名刺のやりとりで初見の名字に出合うたびにルーツを調べた。ワクワクの連続だった。 「勉強するようになって、なるほど、すげえなって、毎日思って、それを誰かに伝えたくなった。で、毎晩かみさんに喋っていたことを、芸人の後輩たちを集めてやるようになって。そこからですね。全国津々浦々、たくさんの人の前で話すようになりました。47都道府県何往復しただろう」
ゴルゴにとって、今年はどんな一年だったのか。 また、どんな思いをこめて「動」の一字を選んだのだろう。 「まだまだ新型コロナウィルスとの闘いは続いています。でも、2020年よりも今年の方が、感染者数は多かったにもかかわらず、社会が常に動いてましたよね。公共交通機関も、スーパーマーケットも、条件付きで飲食店も動いていた。賛否両論があった東京オリンピックも、なんとか一年遅れで開催することができました。僕は自国開催のオリンピックを観ることができて、本当に嬉しかった。免疫力が上がった気分になりましたね。制限があるなかでも、動き続けることの重要性を実感した一年だったと思います。僕自身も、しばらくできなかった少年院での講演を再開することができたり、ようやくYouTubeを始めたり、少しずつ前に向かって動き出すことができました。だから、ゴルゴ松本が選ぶ今年の漢字は、『動』です」 ちなみに(よく聞かれるそうだが)、一番好きな漢字は、特にない。 「全部が面白いから、決められないんだよね」