「数千年に一度」海底隆起の能登漁港、復旧は東日本以上に困難 岐路に立つ漁業者ら
また以前は24時間体制の荷さばき所で漁協の職員が漁に必要な氷を提供したり、魚を選別して箱詰めしたりする作業ができていたが、地震の影響で職員が金沢などに避難し、人員が激減。漁師の作業工程が増えることになり、出漁回数の減少も予想される。
県によると、県内69の漁港と12の港湾のほとんどが同様に地盤の変化による被害を受け、順次工事を進めているものの多くが地震前の状況に戻れていない。輪島を中心とした奥能登の漁業は岐路に立たされており、漁師の松下さんは「比較的若い年代はアルバイトを始めているが、この年では難しい。一刻も早く漁ができるようにならないと」と強調した。
■ハードとソフト両面の支援
地震で大きな被害を受けた石川県内の漁港は順次仮復旧が進み、これから本復旧に入るが道のりは険しい。海底の隆起は深刻なところで最大約4メートルとなり、専門家は「こうした現象は数千年に一度」とする。平成23年の東日本大震災で被災した漁港以上に復旧作業が難しいとされ、目途が立たなければ能登の漁業が衰退する懸念もあり、迅速な支援が求められる。
東日本大震災では岩手、宮城、福島の3県を中心に約320の漁港が被災し、8230億円の被害が発生。津波により漁港施設が壊滅したほか、約1メートルの地盤沈下などで漁港としての機能を失ったが、沈下の分をかさ上げすることで原状回復に至っている。
一方、能登半島地震では例のない大規模な海底の隆起が発生。輪島市の鹿磯(かいそ)漁港では最大4メートル隆起しており、現地を調査した専門家は「干上がった状態を掘削するには時間がかかり、工事は東日本以上に大変」と話す。
復旧に時間がかかることが予想される中、漁業者をどのように支援するかが重要となる。国は被災者の生活と漁業の再建を支援する政策パッケージを策定しており、漁再開までの間、他の漁船や他地域の漁業者が被災漁業者を一時的に雇用して行う研修や、金融支援などを展開している。